双子はクラスを分けられてしまうのが学校の七不思議だが(?)、幼馴染は別にそうでもない。というか高校ともなればそんなことどうでもいいのか、どうなのか。まぁなんでもいいが、とにかく私と三成は同じクラスで、ちなみに2年で、席は私が真後ろだった。

竹中先生とか現れると「誰コイツ」レベルに優等生に変身する三成は、他は教師といえど見下しているのでいつも外を眺めている。左隣は運良く窓なので、ちょっと視線をずらせばクラスメイトの後頭部の群れから目をそらすことが出来た。

「この かんじが よめるひとは?」
「ハイ!謙信様、ハイ!!」

上杉先生の国語の時間は三成にとってどうでもいい時間だった。狭い教室にそれなりの人数を詰め込んでいるので机の間隔は狭い。本当に目の前に三成の背中があって、顔は窓の方を向いて頬杖をついている。

授業態度のなっていない三成を観察しておいてなんだが、かく言う私も授業に熱心な方ではない。竹中先生の授業の間は背筋を伸ばしてキラキラした目で黒板を素早く写し、今のかすがのように挙手して積極的に授業参加するような三成の方が、幾分かまともと言ってもいいかもしれない。
暇潰し程度に写していた黒板も授業の流れについていけず、黒板消しで未写しの文字が消された所でやる気を失った。上杉先生の授業の間は静かにさえしていれば何をしていても赦されたから、おもむろに使い道を失ったシャープペンで三成の背中をつついた。

「ッ!!」
「Ah〜…?どうした石田」
「っ…なんでもない」

ボーッとしていた三成は、いきなり背中に何かが刺さってさぞ驚いたのだろう。声にならない声と共に背筋を伸ばしたものだから、隣の伊達くんが不審げに三成を見ている。何か面白いのでもう一度つついたら、三成はもう驚かなかったが、キレた。

「舞雷貴様ぁああぁあ!!」
「ごめ〜ぬ」
「うるさいですよ、そこ。ろうかでたっていなさい」
「えええ!私も?!というか今時そうそう無いですよ廊下で立つの!」
「はやくなさい」
「覚えてろ三成…!」
「それは私の台詞だ!!」
「こばやかわくん、あなたもですよ」
「何で!?」
「いねむりしていたでしょう。わたくしの めは ごまかせませんよ」

私の隣に座っていた小早川くん(愛称・金吾)は巻き添えをくらい、何とも言えないじとっとした目で私と三成を見つめていたが、三成の「貴様何か文句でもあるのか」的な眼光で黙殺された。