舞雷がちょっと体調がすぐれないと二人に呟くと、真っ先に毛利が手を回して(教師に手が回る時点でどうかと思うが)、彼女は見学が許された。この日体育館で、お遊び程度の卓球の試合をする。

「…ま、こうなることは判り切ってたけどよぉ、毛利…」
「フン…我に敵うと思うてか」
「本来ならこんなもん…真面目にやるつもりはなかったがよ、この際舞雷を賭けようじゃねェか!」
「臨むところよ!」
「…え、何やってんのあの二人?」

和気藹々とシングルの試合が進み、ついに(?)元親と毛利の試合となった。向かい合って立った二人は教師や審判役など完全無視して啖呵を切り合い、何故か引き合いに出された舞雷は他人事のように驚いた。

「っはは!まず俺が先手よ!」
「たかが1点取った程度で浮かれるでないうつけが!舞雷は渡さぬ!」
「あんたこそ俺に勝とうってのかい?俺が勝ったら舞雷は俺のもんだ!墓場まで付き添わせるぜぇ!」
「下衆が…!舞雷は我の子を1ダース産む予定ぞ!!」
「……舞雷ちゃん、あの留年二人凄いこと云ってるけど…」
「佐助くん…ごめん、私には聞こえないや」
「……そうだよねー。聞こえないことにしたいよねー」
「…ていうか元親まで私のこと…」

好きだったの?と半笑いで(二人の言い争いを聞いているうちに正気を失った)舞雷は呟いた。ものすごい剣幕でピンポンする二人を場の全員が何とも言えない心境で見守る中、点数盤は僅差でめくれ、やがて元親が勝った。

「うかつ…!」
「だから言ったろ毛利!……へっ、これでいいきっかけが出来たぜ…」
「え、え?」

相当精神的に打ちのめされたらしい毛利はその場で頭を抱えてしまった。勝った方の元親は、クラスメイトに交じって見学していた舞雷に着実に近寄ってくる。そしてうろたえる彼女にラケットを向け、いい笑顔で、

「よし、今日から俺の嫁だぜ!!」

と、言った。