「貴様に権利はない」
「うっぅ…」

憎悪?憤怒?どちらにも似た冷たい視線が私を射抜く。私が大阪城に忍び込んだのは石田三成の暗殺が目的ではない。単なる内情を調べる為だった。だが私は器用に立ち回ることが出来なくて、何の情報も得られないまま石田三成に捕まった。彼の自室でだ。そしてことはこうなる。斬首の刑でも拷問でもなく、目的は躰。

叫ばれては面倒だからと轡をかまされ、腕は後ろ手に縛られた。あいにく私は色事には長けていない。おかげで殺されるより酷い恐怖が全身を支配する。怯えて必死に首を振るが男は慈悲のかけらもくれない。力任せに頭部を掴まれ顎先から眉間までねっとり舌で舐め上げられる。ぞっとして固めた私の体を、まるで愛しくて仕様がないように掻き抱いて、肺を潰そうとする。いやらしい粘着質な音と共に耳を噛まれ、着物を裂かれ。ぼろ布きれが身体にまとわりついているだけの姿になった頃には、抵抗する体力がほとんど終わっていた。

「私は貴様を十分すぎる程知っているぞ、舞雷」
「っ…?」
「貴様は君主に売られたのだ。私の寵姫として」
「っ、っ…!」
「せいぜい、まっとうしろ」
「ん、ん――ッ!」

信頼する君主に売られたなんて。それもこんな寵姫だなんて程遠い扱いだ。石田三成の言うことを信じる必要はなかったけれど、私にはなんとなくそれが真実なのだと悟られた。絶望と恐怖で頭を振るばかりの私を男の手が嬲っていく。首筋に顔を埋めて咬みついたり吸いついて、乾いた膣に指を這わせて私を昂らせようとする。

「濡れんな、舞雷。何故だ?」
「ふっ、う、」
「…舐めて欲しいのか?」

違うと頭を横に振るのが何の役に立つというのだ。男は小さい子供に聞くように喋り、下腹部に顔を埋めた。言いようのない恥と恐怖と嫌悪で震える私の両足を強く開いて、ざらざらした舌で舐め上げる。暫くそれに耐えていれば、私の女が嬌声を上げ、意志と反して男を迎える準備を始めた。男の指を数本軽く銜え込むようになると、満足そうな顔が近付いてきて口づけが降ってくる。

「挿れて欲しいか?舞雷」
「んっ、う、ぅ!」
「欲しいだろう、私が…」
「うう…つ」
「欲しいと言え」

頑なに首を振れば男の目は冷ややかになって、声色も鋭利になった。轡が外され言葉が自由になる。私はまた首を横に振って「いや、いや…っ」とだけ呻く。機嫌を損ねた凶王三成は一度だけ私をぶつと、堅く勃起した男根で一気に破瓜を貫いた。

「ひっ…ぃ!」
「ん?いいか…?」
「い、や…ッ、痛い!やめてっ、抜いてッ…!」
「そうか、気持ち良いか」
「痛いっ…ひぅっ…」

もう私の拒絶など耳に入らない様子だった。ぐじゅぐじゅ酷い音を立てて結合部が過熱する。打ち付けられる腿や尻の感覚がない。やがて痛みが鈍い悦楽に代わってきて、私はそれにも恐怖した。強く瞼を閉じ息を殺して耐え続け、やがて男は私の中に欲を吐き出す。男根が引き抜かれて、中からどろりとした何かが垂れた。

やっと、終わった。

「いい子だ舞雷、そのままうつ伏せになれ」
「…えっ……?」
「膝を立てて尻を出せ」
「う、そ……嘘っ…」
「まだ足りん、まだ。お前を蹂躙し尽くしていない」
「いっ…、嫌……もう…、あんっ!」

終わったと思ったのに。

男は私に愛していると言う。けれどこれの何が愛なのか。
やがてやってくる快楽の波を知らぬ私は、己の悲運を嘆いた。


*肉欲で語る愛