眉目秀麗成績優秀、ついでに一触即発(怒りが)。そんな三成はついでの部分で女子から敬遠され、タックルすればぶん殴り返してくれる距離にいるというのにアイドルかよレベルに高嶺の花になっていた。(ちなみに中には同じく人気のある家康の方に気持ちが流れる者も多いというのは笑い話だ!)

いやしかし、三成が女子にそれほど近寄ってもらえないのは、彼の怒りっぽさだけが理由ではない。何を隠そうこの私、何ごともオープン主義者の舞雷ちゃんは、同じくバカ正直な三成とは激しく“バカップル”で通っていた。
……こっちの方が本当の原因かも知れない。

「おい貴様席を代われ」
「え、何言ってんの?三成君は3番を引いたんだからあっちの席でしょ」
「…金吾、もう一度だけ言ってやる。私と席を代われ!!」
「そんな怖い顔しないでぇ〜!大体やだよ、三成君の席隣が刑部様(※ニックネーム。本名大谷君)じゃないか!僕怖いよ!」
「貴様の隣には誰がいる…」
「僕?僕の隣は……はっ!!」
「ごめん金吾君……」

と謝ったのは他でもない私だった。
担任教師の気まぐれで行われたくじ引きによる席替えで、前回教師を恐喝して無事?隣に座っていた三成と大分離れたのだ。
こうなると普段心が穏やかな時は静かにしている三成だが、たまらず行動開始する。本来なら私の方も同じことをするのだが、三成の隣…大谷君ではないか。もうしっかりと鎮座してるしさすがに言いだせない。そこで大人しく座っていると、金吾君がそれはもう憐れなことになったのだった。

「貴様がどうしても退かぬというなら刑部と舞雷を交換する」
「それどっちも同じじゃないか〜!って、え?僕の後ろ毛利様が来るの?み、三成君僕代わるよ…どうせ隣代わらないし…」
「始めからそう言え。どのみち貴様に拒否などさせん」
「だから退くってばあ〜!お願いだから僕のえんぴつで刺すのやめてよ!痛いって!」
「そうだ舞雷、位置は此処でいいのか?もっと後方が良ければ私が交渉する」

三成と金吾君のやりとりは、新しい席への期待と机の移動で忙しい皆もずっと気にしていた筈だ。やっと大人しくなるかと思えば三成がこんなことを云ったので、私の返答如何では、今の席より後部にあたる2列くらいの子達が金吾のように絡まれることになる。当然該当する子は身を強張らせ、この暴君的行為を注意することも出来ない教師は所在なさげにうろうろしている。

「いいよ三成、ここで」
「私は後ろが毛利では落ち着かんのだが」
「案ずるな。我は貴様になど興味がない。貴様など空気と同じよ。喚いておっても軽くスルーするわ」
「私をスルーしても舞雷を気に留めるのではあるまいな」
「……略奪愛も結構だが、今は時ではない」
「貴様狙っているではないか!!首を差し出せ、削ぎ落とす!!」
「うう…僕のえんぴつで毛利様を刺す気だよ三成君…あわよくば首を落とす気だ…怖いよお…」

毛利君のは恐らく冗談だろうが真に受けた三成は暴走した。さっき金吾君をつつくのに使ったえんぴつをまだ握っていたから、それを突きだして毛利君を脅す。毛利君は無表情、至極冷静。

「我が舞雷を狙っているのにようやく気づいたか」
「ちょ、毛利君本気だったの!」
「舞雷自身も気づかぬとは。……良い機会だ、教えてやろう。舞雷を狙っている男は我以外にも数多いる。舞雷が貴様のDVに耐えかねた時、既に貴様の手には戻らぬと知れ」
「私がDV……!!」

三成はショックを受けた。

「いや…三成、別に私はDVだなんて思ってないよ?」
「嘘をつけ。いつか我に愚痴をこぼしていたではないか」
「ちょ毛利君嘘はよくないよ?!」
「そうか…私は……」
「信じた!毛利君を!」
「DVだったのか……」

それを否定してくれるのはあいにく私だけだった。私自身はそうとも思わないが、他の皆はまさにDVという感じの扱いを受けているので否定してくれるわけがない。

「舞雷…私は心を入れ替える。今までのことを赦し、これからも私と共にいろ」
「貴様往生際が悪いぞ!いつまでもネチネチと!潔く、ふられろ!」
「毛利君言うことがストレートになってきたね!」
「その依存が見苦しいぞ石田!」
「黙れ、いくら私が甲斐性なしだとしても舞雷は放さん」
「そうだとも毛利君!残念だけど私も家事全般、一切出来ないし練習する気もないけどね、三成の奥さんというポジションは渡さないのだよ〜!」
「その意気だ舞雷、もっと言え!私はお前に家事など求めない!」
「なんと…!我なら家事は妻にさせる……石田、そこまで…」

何か少しずれたところで感服した様子の毛利君は、とりあえず大人しくなった。三成も大人しくなりえんぴつを金吾君の頭めがけて投げつけた。私も当然大人しくなった。

「……OK、授業はじめるぜ」

そしてようやく大人しかった伊達先生のターン。


なかよし