「舞雷殿が作った団子は正直粉っぽいでござるが甘くて美味ですぞ!」
「わぁ、よかった!」
「そしてこの餡子がまた…!つぶあんとこしあんの中間で実におもしろいでござる!」
「半分こしたらめんどくさくなって混ぜちゃった!」
「総合的にいって美味!!」
「やったぁ〜!!」

巷で団子好きと有名らしい幸村君を招き、つい最近作り方を覚えた団子をふるまってみた。不器用なのでいびつな形に仕上がった団子を彼はもりもり頬張り、粉っぽくて中途半端な粒が混じった餡子のかかった団子を…美味と評価してくれた。

「待たぬか真田。これのどこが美味なのだ?」
「なんと!?舞雷殿が作った団子にケチをつけると申すのか、毛利殿!!」

……けれど、やはりこの人が粉っぽくて――(以下略)の団子を美味いと言う筈もなく。
(いやしかし、元就様は正直私に甘いので、いつもの調子で冷たく「まずい」と言い放つことは出来ないのです)

「我は我に代わって貴様に「まずい」と言わせる為にこの場を設けてやったのだ。それを美味だなどと評されてはたまらぬわ」
「毛利の旦那、それじゃもう舞雷ちゃんに直接言ってるようなもんだから」

幸村君に随伴していた佐助さんが言う。確かにそうだ。まあ、正直私も自分の不器用さと団子の出来については自覚があるので、まずいと言われてもそんなに傷つかないのですが。

「某、舞雷殿に手製の団子をふるまって貰えたこと…それが至福!いかに団子が粉っぽくとも美味であることに代わりなし!!」
「!!!」
「あれ?もしかして感銘受けちゃったの?毛利の旦那?」

何故か、幸村君の嬉しい一言に感動していたら…元就様の様子が激変した。その通りだとでも思ったのだろうか。

元就様は、手にしていたいびつな団子をもう一つ口に放り込み、頬に詰めたもののやはり噛む勇気はなかったようで(粉っぽい団子って確かにまずいですな…)、リスみたいに頬を膨らませて私の肩を掴み、真顔で、

「び、美味ぞ」

と言った。

「……無理しなくてもいいですよ」
「いや、そなたが我のためにこしらえたというだけで、美味よ…不器用なりに腕をふるってくれたということが、至福の極みぞ」
「その通りでござる、毛利殿!!」
「よかったねー舞雷ちゃん。しかし毛利の旦那って舞雷ちゃんのことこんなに好きなんだー。おもしろーい」
「あはは………」

確かに、団子を頬に詰めて真顔でくさい台詞を吐く元就様は、おもしろいかもしれない。
けれど私は確かに嬉しかったですよ。


まずい団子でしたが