手首の上あたりが地味に痛い。というのも、元就様とたまには周りから見て仲睦まじい様子を見せつけてやろうと手を差し出したのがいけなかった。いつものように完全緑色の武装をした元就様の横にすっと立って、さりげなく手を伸ばし、指先同士を触れさせる。そこまでは何も問題はなく、懸念していた“振り払われる”ということもなく。私の危惧を裏切って元就様は私の手を熱く握ってくれたのである。しかしその瞬間胸に溢れる筈だった喜びは何故か感じられず、代わりに襲って来たのが痛みというわけだ。
「我がらしくないことをした所為だな…」
「いえ、それはいいんです。今後振り払うようなことはしないでくださいね…腕は無事でも心が修復不可能なまでに崩壊しそうです…」
「………」
腕より長かった鎧…というか籠手…?の鋭い部分がガリリと皮膚を引っ掻き、挙句食い込んだのである。まったく大事ではないが武将どころか兵でさえない私には結構な痛手だった。刃物で薄く切られた程度の傷が出来ていて、いくばくか血も出た。
消毒されて包帯を巻かれる頃には出血も止まっていた程度であるから、元就様もそれほどには心配していない様子で表情は冷静だ。けれど今後手を繋ぐのが難儀になってしまったようだ。というよりこの場合一番の問題は、仲睦まじい様を見せつけようとしたというのに、周りから見たら元就様に痛めつけられている私の図でしかなかったことだ。
「舞雷様、その腕は…!?ああ、さっき元就様にへし折られたのですね!!」
「………」
ただの包帯を見て叫ぶ兵士に、どんな言葉を返せと言うのか。


優しいのに