「いい度胸してるじゃねぇか舞雷、俺の授業で堂々と携帯電話なんざ弄るとは」
「わっ!」
「Hey小十郎(先生)!こっちで石田も弄ってんぜ」
「貴様覚えていろ…だ、だ…」
「伊達政宗!そろそろ覚えろや!!」

当然学校は携帯電話持ち込み禁止である。それを授業中、堂々といじくりまわす舞雷と三成が怒られるのは当然のことだった。この時間の授業を担当していた小十郎先生は、列の先頭にいた舞雷の目と鼻の先で、最後列に座っていた石田を睨みつけた。

「申し開きの時間をくれてやる。学校で、それも俺の授業中に連絡を取らなきゃいけねぇ理由があるんだろ?」
「先生…私、今遠く離れた場所にいる恋人にメールを打ってました。淋しくて死にそうで」
「……舞雷、お前遠距離恋愛だったのか?」

言う舞雷があまりにも淋しそうに顔を伏せるので、小十郎も男であるからして、か弱そうなその姿を見て同情を禁じ得ない。もしも自分に遠く離れた場所で淋しがる恋人がいたとしたら…などと考えれば、舞雷を責めることなど出来よう筈もない。

「そうか。そりゃあ仕方ねぇな。だがなるべく授業はまじめに受けるようにしろよ」
「はい…」
「石田てめぇはどういう理由だ?」

小十郎は舞雷を慰めるように撫でてやり、三成を睨みつけた。

「私も遠く離れた恋人と連絡を取っていた」
「あ゛?」

まあ、この態度の差は仕方ない。

「本当はすぐにでも抱き締めたい所を辛抱しているんだ。貴様に妨害されるいわれはない」
「ここは学校で、今は俺の授業中だ」
「何処にいようと周りが何をしていようと、私の総てはひとりの女の為にある」

三成が臆することなく言い放ったこの言葉に感銘を受けたのはクラスの大半。小十郎も目の敵にしていた相手とはいえこれには関心した。
とりあえずどちらも見逃すことにした小十郎は、咳払いをひとつ。

「今遠距離恋愛はやってんだな…。ちなみにお前ら、恋人はどこにいるんだ?」

二人が同時に指差した相手はお分かりだろうか。


これでも遠いのです