ゆめうつつ





失明ネタ










そっと頬に触れてみれば、驚いたように肩が震えた
服の所為でわかりにくいがその肩は思っている以上に細い
はじめて、いつも目を隠す様にかけられた黒眼鏡をとってみれば、瞼が下ろされていて、ふるりと震えてゆっくり開いた

やっぱり、彼は目が見えないのだ
いつものあの偉そうな態度はどこへやら、風邪の所為もあるのか動きも緩慢でなにも言葉が発せられない唇は小さく開いてまた閉じられた

しばらくしてゆっくり彼の指先が俺の頬に触れる、ちゃんと存在を確かめるように

「泣いてる」

彼の頬に触れていた指に感じた生温い感触、知らない間にぼろぼろと溢れだす涙
泣いたことがないからか、それが涙とは思っていないようだ

「‥、‥‥」

震えるばかりの唇がまた開かれようとしたが戸惑ったようにまた閉じてしまったそして白い指先がまた離れる
それに空いた方の指を絡めてぎゅっと握りしめた

「‥どうした?」
「‥‥いつから、気づいていたんだ?」
「いつからって‥最近だけど‥やっとお前のことわかるようになった気がする、まだまだだけど」

優しく抱き締めれば弱弱しく服を握り締めた彼の指先、いつのまにか全身が震えて、何かに対して怖がっているようだ

「大丈夫だって、どこにもいきやしねぇよ」
「‥‥キバ‥キ、バ‥」
「どした」
「すまない‥‥」
「いいんだよ、泣きたい時くらい泣けよ、ずっと一人でためこんでんじゃねぇよ」

そっと顔をのぞけばきっと冷たく凍りついて誰にも言えずにいたことがあふれ出したのだろう、震える体で震える声で必死に俺の名前を呼んで行かないで、行かないでという、彼を強く抱きしめた
光なんて何も見えない世界でずっと一人で生きてきた彼との距離が一気に縮まった気がした

「顔、あげろ、シノ」
「‥‥‥?」

ゆっくりと顔をあげた彼の、シノの輪郭をなぞってそっと唇をなぞって体を引き寄せる
少しだけの無言が続いて、ゆっくりと唇を離す

「‥キバ‥‥、」

小さく耳元で聞こえた声を聞きとってそっと、ぎゅっと体を抱きしめて先ほどより熱くて甘くて深い口づけをしてそっと白いシーツの上に押し倒した



目の端に映った時計の針は午後2時半を過ぎたころ、独特の静寂の中、甘い彼の声を聞きながら、そっと白い首筋に跡を残した























白い、白い、現に溺れて君を探すの
(いかないで、どこにも、わたしはここにいますから)





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