浮遊する影の群れ











それは綺麗な、夢だった


海の中にいるよう、ごぽごぽと音を立てて目を見張れば綺麗な銀色の髪に目を奪われた
同じ色の睫毛がふちどる瞼は固く閉ざされている

きっとそれは一目ぼれ
息をのむほど美しいその人に触れてみれば、ゆっくりと瞼が開く

そしたらあまりにも綺麗に笑うから
つられて笑った
ふわふわと浮かぶ感覚に包まれながら俺はそんな彼の体を抱き寄せた

綺麗な、綺麗な夢


でもこの夢が終わってしまえばもうこの人と会うことはできないのだろうか
そんな事をおもいながらそっと瞼を下ろした





目覚めればいつもどおりの家の天井があるだけで
いつもと同じような朝を迎えた
ベッドから降りて、ご飯を食べる
いつもの、朝

でもどこかまだ夢の続きを見ているふわふわとした感覚に覆われながらいつものように一日が始まった

ふと自然に足は海に向かっていた
もしかしたら、もしかしたらと
港に向かえばそれは夢で見た綺麗な銀色の髪
くるりと振り返ったその人はやっぱり夢で見たあの人で

「見慣れない、顔だな」

いつもの自分を取り繕って話しかける
すると心地のよい声で、それもそうだろう、とかえってくる

「あんた、名前は?」
「そうだな、クラースだ」

触れてみたくなってそっと触れてみれば恐ろしいほど体は冷たい

「温かいな」

心地よさそうな表情を浮かべて笑うその人の笑顔はやっぱり綺麗で
無意識に彼の体を抱き寄せた
海の香りがした

あの時のように瞼を下ろしてただ潮騒を聞きながら時間の流れに身を浸す
背に回された手が、小さく震えているのに気づいた

「私も夢でお前と出会った。夢のようにだきしめてくれた」

なんでそんな悲しそうな声を出すの
なんで、なんで

「このまま、ずっと一緒に入れたらいいのに」

また海に戻らないといけないから

きらきら、月が反射した綺麗な海に目を奪われる
さわさわ、潮の香りを乗せた風が頬をくすぐる


そっと口づけたら、もうこの夢はおわり
腕の中のあの人は腕から離れて海の中に消えた

あぶくとなって消えたあの人は涙を流していた気がした



これは最初からかなわない、恋だったんだ
つられて流れ出した涙が止まることがなくただその場に崩れ落ちた

まるでどこかできいた、童話のようだった









浮遊する影の群れ
(どうかあのひとをつれていかないで)



















twitterから瑠菜さんのリクエストでチェスクラ、でした。


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