Je jetterai un sort.











からん、と音を立てて扉を開ければおしゃれでいてどこかレトロな雰囲気のバーだ
旅をしたのはいつだっただろうか、そう思うほどに時間の流れは速いものだ
ふと目がいったのはカウンター席の一番奥で目に留まったのは美しい黒髪の男性だ
まさか、この街にいるわけないか、なんて思いながら少し間を開けて席に座る

適当に酒を頼んでだしてもらった酒を口に含みながらちらりともう一度その男性の方を向く
そうしたら片方の目がかくされていたが綺麗で深海を思わせる青色の瞳と目が合った

この色は、あの人しかいない
でもまさか、これは夢じゃないのか

そう思ってはみたがどうやらこれは現実らしい
弧を描く、綺麗な薄い唇が開く

「久しぶりだな」

心地よくなるほど低い声を聞きながら金縛りにあったように動けなくなる
立派になったものだなベルフォルマ

くすっと笑った彼が席を立って隣に座る
雰囲気も変わってしまっていたが確かに彼、リカルドだ

「ぼんやりして、情けない顔だな」
「う、うるせえ!てかリカルドお前なんでここにいるんだよ」
「少しな、用事があって」

目線をはずして頬づえをついてリカルドは一呼吸置いて呟くように言う

「ベルフォルマに会いにきたそれだけだ」
「へ!?」

相変わらずリカルドにはかなわない

「少しは大人になったかと思ったら相変わらずだな」

白く長い指先がグラスの表面を滑って持ち上げられるそして綺麗な唇がグラスにつけられる
その仕草が色っぽくて
リセットするためにぐっと度の高いウィスキーを喉に通す
焼けるような感覚と心地よい香りが鼻をつく
深く息を吐くと心配したようにリカルドが顔を覗いてくる

「大丈夫か?悪酔いするぞ?」
「これくらい大丈夫だよ」

強がって見せればまたそうやって綺麗に笑うんだ
本当に卑怯だ
それに惚れてしまってる俺にも原因はあるんだろうけど
涼みたくなって席を立ってお金を出してカウンターに置いた
するとリカルドもついてきて外の大通りに出た俺の隣に並んだ
もう時間的には人通りも少ない
振り返ればリカルドに腕を取られる

「おい!」

振り返れば目線が俺より少しだけ低いのに気づく
ちょっと新鮮かもしれない
上目づかいになっているリカルドも

人もいないからと手を握ってリカルドの腰を引き寄せる

「ベルフォルマ?」
「いや今までこんなことできなかったからよ」
「そうだな」

言葉が終わる前にそっと唇を塞ぐ
触れるだけですぐ離れて誘うように笑う彼の姿
いじわるだな、なんて思いながら体を離す

「ところでリカルドはいつまでここにいるんだ?」
「決めてないな」
「は?」
「決めてない」

なんて爆弾発言投下してるんだこの人は

「言っていただろう、いつかベルフォルマのもとにいくと」
「んできたってわけか‥」
「そうだ、嬉しそうに言っていたじゃないか?」

いつでも待ってるからな
ああそんなこといったな、そうだ言った確かに俺は言った
だからってこんな突然来るなんて思いやしないだろう
でもまあ嬉しいし本当にきてくれるなんて本当に夢みたいだ

「改めて、よろしくな」
「‥お、おう」

もう一度手を握って家までの道をまた歩き出した











Je jetterai un sort.
(甘く、艶やかに)





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