もうすぐ夜が明けるころです












なんてこいつらはデリカシーがないのか、とキバはぶつぶつ思いながら人の家に上がりこんではしゃいでいるナルトを睨みつけていた
そんなキバをよそにだらだらと二人でゲームをしているのはシカマルとチョウジ
そんでもってなぜかリーもいる

なぜキバの家に来たかと言えばどこの家に集まるか、となった時に家柄のこともあって大きな家に住んでいるキバの家にいこうということになった
広さならシカマルだって大きかったはずだと、キバがシカマルに言ったが母親が駄目だということでキバの家になったらしい

「いいよなあこんな広い家」
「しょうがねえだろ犬何匹いると思ってんだよ」

庭の方から聞こえてくる犬の鳴き声、もうそろそろ餌の時間だと思って棚をあさっていれば後ろに誰かいるのに気づいて振り返る

「うお、姉ちゃん!」
「あんたいたの?」
「今日は任務休みだからよ、姉ちゃんは?」
「仕事は昼までだから帰ってきたところ、餌あげなきゃ」
「姉ちゃんやってくれんの?」
「あんたもするのよ」

ひとりであげるとなると骨の折れる作業だから丁度よかったと、餌をやり終わって自室に戻れば先ほどより酷い惨状にがっくりと肩を落とす

「お前ら自分で掃除しろよ」
「えー」
「えーじゃねえ!」

思いっきりナルトをひっぱたくと仕方なく掃除をしだしたのをリーに手伝わせだしたのを眺めていればゲームに飽きたらしいシカマルとチョウジはだらだらと寝転びだした

「んで、今からどうするんだよ」
「夕方まで時間あるしどっか遊びに行くってばよキバもな!」
「は?俺そんなの聞いてねえよ」
「いやさー急に決まったんだけどよ、先生たちが任務終わってから皆で飯でもってなってるからさいのとかサクラとかも入れてって感じだけど」
「いつきまったんだよ」
「ちょうどお前の班が長期の任務いってる間」

などと言っていれば強制的に連行される形になって折角の休日がなんて思いながら死んだ顔でついていけばネジも合流した
ふと、キバは思い出したように声を上げた

「んでこの話ヒナタとシノ知ってんの?」
「いや、だからお前に今から呼んでほしいって」

そんなことを言っていればキバを探していたらしいシノがいた

「どうしたんだよ」
「今すぐ病院までこい」
「病院?」
「ヒナタが倒れたらしい」
「倒れた?」
「昨日までの任務の時に負った傷が原因だ」

それを聞いて慌てて病院に向かう
ロビーに向かえば話を聞いたらしい紅もいて医者から事情の説明を受けていた

「先生、ヒナタは?」
「まだ分からない、安定してないからどうとも言えないわ、昨日任務終わった時は大丈夫そうだったのに」

気づいてやれなかったことが悔しいのだろうか手を強く握りしめている
病室にはまだ入ることができず病室前の廊下の椅子に腰かけていた
紅はこのことを連絡するために綱手の元に向かった
重い空気だけが立ち込めている、静かすぎる午後の陽気に包まれた廊下でただ何も言わずに座っているだけだった
キバは落ち着かないようで外を見たり時計を見たりしている、シノはただ静かにどこかを見ているだけだった

それから数時間、容体は悪化する一方で医者や看護師たちがあわただしく動き部屋を出入りするたびに心配な気持ちが増していくだけだ
気づけばもう夜で人もほとんどおらず不気味なほどに冷たく張りつめる空気






ゆっくりと瞼を開くと見慣れない天井と濃紺の空に映った月がまぶしい
はっとして体を起こすまだ痛む傷口を押さえながらベッドから降りて窓をあけてみれば風が吹きこむ
ふと声が聞こえてヒナタは振り返る

「ヒナタ、大丈夫か?」
「キバくん‥?」
「心配したんだからなあ本当‥」
「こんな時間に、いつから‥?」
「昼から、ずっとお前が起きないからよ」

キバの後に部屋に入ってきたシノは何も言わずに二人の会話を眺めていた

「ごめんね、私また失敗しちゃって、こうして迷惑かけちゃった‥」
「別に迷惑なんて思ってねぇし任務だって成功したんだ」

ぼろぼろと溢れる涙、声を上げて泣いて膝から崩れ落ちそうになったヒナタをキバとシノは支えてベッドに座らせる
二人の手がヒナタの頭をぽんぽんと撫でてキバは笑って泣くなよ、とハンカチを手渡した

「ひとりで我慢するものではない、少しでも苦しいと思えば言えばいい」
「でもっ‥」
「相手が迷惑だと思わなければそれは迷惑ではない」
「っごめんね‥っごめんね‥」
「謝るなよ」

どうしても涙が止まらない、嬉しくて嬉しくて
ヒナタは涙をぬぐいながらありがとう、という

「また元気になれば戻ってくればいい、いつでも待っている」
「うん、本当にありがとう‥」
「どこかに行ったりしない、だからゆっくり休めばいい」

小さく微笑んだシノにキバは驚いたような表情をした

「なんだ」
「いやお前俺が大怪我して入院したときそんな表情しなかったぞ」
「お前が死ぬはずないと思った」
「なんだそれデレてんぐほっ!!!」

シノに思いっきり蹴り飛ばされてキバは思わずうずくまる
そんな二人を見てヒナタは泣きながらも笑って苦しそうだ
しばらく震えながらうずくまっていたキバもつられて笑う


ああ心配しなくても私の居場所はここにあるのだとヒナタは心の中で呟いた













もうすぐ夜が明けるころです
(どこにもいかないよ、ここでいつでも待っているから)


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