笑顔を届けにきました











静かに、静かに、寝ているかもわからないほど静かに彼は眠る
さきほどの突然の豪雨に体力も奪われて、すぐに眠ってしまった姿を見て少し癖のある意外と長いらしい髪に指を通してみれば小さく声を上げてゆっくりと瞼を上げた
サングラスに覆われていない瞼はまだ焦点が合っていないようであたりを見回した後首をかしげている

「お、起きたか?」

何も言わずぼーっとこちらを見たまままた布団に顔を埋めてしまった
ぽんぽん、と頭をなでると手を払われる
こういうことになれていないらしい

「どうした?」
「いえ‥」

ようやく頭が覚醒したらしいシノはゆっくりと体を起こした
濡れてしまって服がなかったらしくシャツを貸してやれば大きすぎてズボンなんてはけたものでなかったために眩しいくらいに白い素足が冷たいフローリングに降りる

「寒くねぇか?」
「‥大丈夫です」

まだ眠たげなシノに温かいコーヒーを出してやれば隣に座ってすみません、と頭を小さく下げてコーヒーを口に含んだ
いつもあげられた前髪が降りていていつもより幼い雰囲気
マグカップに薄い唇がつけられてゆっくりと離れる
色っぽいしぐさに、心音が早まる

「どう、しました?俺の顔に、何かついていますか?」
「いんや、なにも」

どれだけ自分の仕草が相手をそそるかこいつはわかっていないらしい
そっと抱き寄せる
驚いたような表情をしたがそのまま大人しく抱きしめられているシノはマグカップを机の上においた

「くすぐったい、です‥」
「いいにおい」

するりと白くて長い素足に指を這わせる
あの口うるさい女子もうらやむくらいの白い肌
男にしては随分と細い腰をぐっと引き寄せてそのまま後ろから唇を奪う

「‥っ‥ん‥‥、先生‥?」
「堪らねぇな」

首筋に舌を這わせてそのままだぼだぼのシャツのボタンをひとつはずしてするりと肩から下ろした

「っ‥あ、‥あっ‥せん、せい‥っ」

甘い声をききながらそのままソファに押し倒した











組敷いて肩で息をしているシノの頬をなでる
先ほどまで続いていた情事を終えてベッドに沈んで口元に手を当ててはぁ、はぁ、と息を吐く唇に触れたくて手をはがして唇を撫ぜた
隣に倒れて体を引き寄せる
白い指先が背に回されて撫ぜられるのがわかる

「大丈夫か?」
「はい‥」
「無理するな、どうせ明日休みだろうが」
「‥すみません」

気にするなと頬を撫でれば伏せられた目を上げてすこしだけ顔が赤くなる
表情が変わらないというがこういうときは流石に恥ずかしいらしい
何を言ったらいいから分からず困った表情をしている

「なんて顔してんだ」
「みないでください」

よそを向いてしまったシノの頬に唇を落とせばもっと赤くなってしまった顔
おやすみ、とにやにやしながらいえば調子に乗らないでください、とぼそっといってシャツを羽織りベッドから抜けだしてしまったシノはソファに座ってそのままぶすっと不機嫌になってしまった


こんなところも可愛くて仕方ないくらいには相当、惚れてしまったのだろう
後ろから驚かそうと静かに近づいていったら思いっきりいれたてのコーヒーをかけられたのは言うまでもない













笑顔を届けにきました
(どんなきみもだいすきです)









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