縮まる距離と雨の匂い



学パロ








何でもない日の、なんでもない平凡な学生生活
さきほどから降り出した雨はさきほどから土砂降りになりだして薄暗い教室の中で外を眺めていれば廊下の方からはしゃぐような声が聞こえる
さきほどまで体育だったらしく、みんな体操服だ
ちょっと風邪っぽかったのもあってさぼって教室でひとりで音楽を聴いたり携帯をいじくっていた
どうやら前の席で寝ている彼もさぼったらしい
ちょっと固いと思うほど校則もきっちりと守るリーとネジが教室に帰ってきてぎょっとした表情でずんずんと歩いてきた

「お前らはまたさぼっているのか」
「体を動かすことも大事ですよ!」
「だって風邪なんだもんしかたねーだろ‥」

といってもなんだかんだいっているネジを無視して前にいるシノは椅子から立ち上がって教室を出て行ってしまった
それに乗じてシノを追いかけて教室を出た
階段をあがっていくシノに声をかけると立ち止まって振り返る

「なんだ」
「さぼるの?」
「悪いか。」
「いいや別に、俺もって思って」

階段を上がって立ち入り禁止の看板の衝立を無視して上がっていく
屋上の扉を開ける
屋根のある場所に座り込んだシノの隣に座る
なにを離すでもなく、ただ淡々と流れる時間を過ごしていればふとシノはポケットからなにかを出した
こちらを向くでもなく差し出してきたのはコンビニで買ってきました、といわんばかりの30円くらいのチョコレート複数個

「なにこれ」
「バレンタインの御返しがほしいのではないのか」

ああ、そういえばシノがバレンタインになにかくれるなんてないだろうからこちらからあげたのだった
それを受けとりすぐに食べる
普通のチョコレートの味だ

「3倍返しだったらもっといいもんくれたって‥いいのにな。」
「財布と相談した結果がそれだったのだ」
「酷い」

膨れながら降り続ける雨を目で追う
すると次の授業の始まりを告げるチャイムがなっている

「あー雨、やまないな」
「そうだな」
「傘、わすれちまったな‥」
「俺もだ」

もうこの授業で終わりだからともってきた鞄をつかんでシノは立ち上がる

「帰るのかよ?」
「あぁ、今から雨が酷くなる」

扉を開けて先生にばれないようにと静かにかつ早く階段を下りて玄関に向かう
家はたまたまで同じアパートということで濡れながら一緒に走る

家に着く頃にはびしょぬれでいつもあがっている髪も降りていてサングラスの奥の目は鬱陶しそうな表情を浮かべている

「風邪は、大丈夫なのか?」
「大丈夫大丈‥ぶえっくしょん!!」
「やっぱりな」

いそいそとシノの家に上がりこめばすぐに眼前が真っ白になる
柔らかいタオルの感触
それを手にとって髪を拭いて靴と靴下を脱いで上がる

「おい、勝手に上がるな」

そんな声を無視して勝手に上がると着替えて来いと、言われて仕方なく自分の部屋でさっさと着替えてシノの家に上がりこむ
もちろん自分の家に上げてもいいのだがあいにくと掃除が苦手で今からだと綺麗にするのに数時間かかるだろう
掃除してくれないかなあと思っていればシノを見ていれば溜息をつく


「‥‥明日どうせ休みだろう。掃除手伝ってやるから明日するぞ」
「やったー!」
「まったく、自分で掃除したらどうだ‥」

サングラスをとって頭を拭いて着替え終わったらしいシノはため息をつきながら携帯をつついている
なにを見ているのかと覗こうとすれば携帯を閉じる

「なに、エロサイト?」

と言った瞬間顔面をぶん殴られる
痛い、とてつもなく痛い
涙目でシノを見ればしれっとしたようにまた携帯を開いてつつきだした

そんなことをいっていれば寒気がして大きなくしゃみをすれば白い手が額にあてられる、そして棚から体温計を取り出してこちらに放り投げてよこしてきた
おとなしく体温を計ってみれば38度4分

「風邪だな、寝ていろ」
「嫌だ」

明らかに嫌そうな顔をする、そんな顔が好きで、ついつい困らせるようなことをしてしまう
でもしすぎると思いきり殴られるから加減が難しいのだが
退屈だとねだってみてもささと寝ろと言うばかりで相手をしてくれなくてベッドを占領する

「変な真似をしなければここにいてもいいぞ」
「へいへい」

ベッドに顔を埋めれば嗅ぎ慣れたそのにおいを肺いっぱいに吸いこんで瞼を下ろす
安心して自然とねむたくなってしまう

そこから何があったかなんて覚えていない






重い瞼を開け、体を起して時計を見てみればとっくに夜の22時過ぎ
がらがらの声のままシノを呼ぶと何かをしていたらしいシノはこちらに振り向く
スポーツドリンクを渡されて一口飲む
心地よい冷たさが喉を通ってまたベッドに沈む

「薬を買ってきた、飯を食ってから寝ろ」

また体を起してソファーに座ってごはんを口にする
なんだかんだ器用なシノが作った料理はおいしくて風邪でもすぐに平らげてしまった
苦手な薬を鼻をつまんで飲んで寝ようとしたが寝れなくなってしまってもちこんできたゲームをいじっていれば取り上げられる

「あー!やめろよ!」
「寝ろ」
「じゃあキスしてくれたら寝る」

本日2度目のパンチを顔面にくらってソファーに叩き伏せられる
もっと優しくてもいいんじゃないかと思いながらシノにぎゅっと抱きつくと力では勝てないらしく大人しくなってぽんぽんと頭をなでられた

「今日だけだぞ」

なんだかんだ優しいシノの冷たい手を握って頬にあてて笑えばしょうがないな、というように笑ってするりと手で頬を撫でてくれた
まだまだ降りやまぬ雨のお陰で、ここまで近づけるのだと、嬉しく思いながら
ゆっくりと唇を重ねた











縮まる距離と雨の匂い
(抱きしめたい、触れたい、愛したい)















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