ヘタレヒーロー!


学パロ/失明









まだまだ寒い時期、転校生が来たらしく担任であるカカシが生徒名簿をもってやってきた
よりにもよって終業式の日になんて、なんとも間の悪い感じであるが

「えーと今日転校生がこのクラスにくるんだけど、きてくれるかい」

よばれてやってきたのは、素顔を隠す様にかけられたサングラスと口元まで覆う服をブレザーの下に着込んでまるで校則無視といった感じの男子
小さく礼をして自己紹介もせず自分に割り当てられた席に着いてそのまま遠くを眺めているようだった。丁度席は俺の前

「まぁ、仲良くしてやってくれ」

出席を取り終わってざわざわといつものように煩くなりだした教室

「おはようーキバ」
「んあ、おはよう」

後ろから声をかけてきたのはナルトとシカマル、リー、チョウジだった。基本的に遊びに行くとなるとクラスのほとんどの男子でで歩いて行きつけの焼肉屋にいったりがほとんどだった。

「今日いってたのお前行くの?」
「お金ねぇしいいや他の奴ら皆でいってこいよ。これが最後ってわけじゃねぇんだし」

テストも終わって春休みを迎える前にクラス会をしようということで女子も男子も全員入れてクラス会ということになっていたが財布を見ればすっからかんで、気も向かなかったためにいかないことにした
今日は終業式ということで昼間でで終えて、みんな今からはじまるクラス会にウキウキしたようで。
一次会は教室で皆でゲームをしたりということだけれど参加しないと決めたキバはさっさと帰ろうとしたときもちろんと言った感じで参加することもなく帰ろうとしていた転校生の彼の方を見る

「お前、帰るんだったら一緒に帰ろうぜ」
「‥‥‥」

無言でこちらをみる。少しだけ様子がおかしい
サングラスの奥の瞳はどこを見ているかわからなかった

「おい、聴いてんのかよ」
「‥あぁ」

低い声でそう告げて目線を反らして歩き出した彼に声をかける
するとすこし驚いたように足を止めた
やっぱり様子がおかしい

「お前どうした‥?」
「‥離せ‥‥」

手探りで探すかのように手を掴んではがそうとする

「もしかして‥お前‥目が‥」
「‥気味が悪いだろう」
「なんでそんなこと言うんだよ‥別に気味が悪いなんておもっちゃいねぇよ」

腕をはがそうとした手を掴んで距離を詰める

「‥‥?」
「別にそれがお前がもってるもんなんだから何も思わねえよ」
「‥‥珍しいな」
「珍しい?」
「そんな風に言ったやつは、お前が初めてだ」

小さく、くすりと笑ってサングラスをとった
光はないけれど綺麗で初めて見た色をしていた

「‥‥。」
「どうした?」

見えていないはずなのに見透かすようなその瞳は瞼で覆われてくすりと笑った後彼は白い指でもう一度サングラスをかけた

「でもお前目見えてないのにどうやってここまで一人で来たんだ?」
「‥目が見えなければ自然と他の器官が効くようになってくる、音や感覚で大体わかる、階段があることも全部」
「本当かよ‥あってか名前きいてなかったよな」
「‥‥油女、シノだ」
「じゃあシノって呼んでも?」
「自由にしろ」

そう言ってさっと腕の中から抜け出て階段を下り出したシノを追いかける
目が見えないのにこうして普通の人と過ごしている
彼には目が見えなくても何も気にしないのだろう

ふと、目に留まったのは首元にかけられたヘッドホン

「これ、何聴いてるんだ」
「言っても分からないだろう、それに嫌でも耳が敏感になる、だから悪口を塞ぐための道具だ」
「あ‥すまねぇ‥」
「構わない、幼いころから、慣れたことだ。こうして人と話すことも、いつぶりだろうな」

靴を履き替えて学校を出て帰路に着く

「シノって家、どこだ?」
「‥すぐ傍のアパートだ」
「ひとり暮らし?」
「あぁ」

道も一緒らしくなんでもない話をしながら二人で歩いていく
5分くらいが経ってアパートについて絶句してしまった
俺の住んでいるアパートと一緒だったらしい
しかも隣の部屋

「俺も‥ここのアパートなんだけど」
「奇遇だな」

ふふっと笑ってシノは部屋の鍵を開けた
部屋の中を見れば整理整頓がされていて綺麗な部屋だった

「勝手に上がれ」

靴を脱いで部屋に入る
何ら変わりない部屋にたてかけられたのは白杖

「これ、つかわねぇの」
「一応、持っているが必要がない限り、使わない」

そういっているシノの話をききながらソファにこしかける
鞄を適当に置いてのんびりしていればお茶をいれてくれたらしく机の上においた
そして隣に座ったかと思えば本を取り出した
お茶に口をつけ、机の上におかれた本を手にとろうとしたらシノも手に取ろうとしたらしく手が重なった

「あっすまねぇ」
「いや、かまわない」
「てか、本読めるの?」

すると本を手に取ったシノはぱらり、としおりの挟まれたページを開いて見せてくれる
ひとつひとつに点字がうってあった
今日はなにやら失礼なことをしてばっかりだと思っていれば心を見透かされているかのようにシノはそっと俺の頬をなでた

「気にすることはない、何でも言ってくれればいい。なぜならそちらの方が俺も気が楽でいられる」

誰にも言った事のない本心だろう
嬉しげな表情の中に少しだけ哀しさが混ざっている気がした
姿を確認するように頬から唇、額などを撫ぜて安心したように指を離そうとしたシノの体を抱き寄せる

「キバ‥?」

ぎゅっと抱きしめて顔にかかった前髪をそっとはらってサングラスをとって机の上に置いたあとの、無音の時間
そっと顔を上げば赤くなったシノの顔
唇に感じた感触はきっとはじめての感触だったらしいシノはじぶんの唇に指で触れて、そのまま顔を伏せた

「もっと笑顔、見ててぇしさ‥だからせめて俺の前でくらい、サングラスとっててくれ」
「‥‥あぁ」
「‥シノ‥好きだ」
「キバ‥‥?」

混乱していて言葉の意味が理解できていないようでシノは伏せたままの顔をもっと赤くしている
最初は偉そうな奴だと思ったけれどこの数時間で彼の本心が見えた気がした

「返事は‥?」
「‥‥俺も‥す、き‥だ‥」

消え入りそうなほど小さい声
可愛いところもあるんだな、なんて考えながらぎゅっと抱きしめて持っていた本を受け取る

「俺が読んでやるよ」

そういって受け取った本を読んでやれば心地よかったのか隣にいたシノは夢との境界をいったり来たりしていた
起こさないようにもう一度キスを落としてぱたんと本を閉じた後シノの体を抱き上げてベッドの上に寝かせた

「おやすみ、っと」

布団を肩までかけてやってベッドに座って幼い寝顔を眺めながら俺はそっとシノの名前を呼んだ












ヘタレヒーロー
(君を守るヒーローになれたらいいななんて)





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