早く愛してるって言ってよって




ED後








「リカルド様、いい加減婚約者を決めていただかないと困りますと何度申したらよろしいんですか!」

 そう言ってお見合い相手の写真を大量に持ってくる執事の男はがっくりと肩を落とした。この街がちゃんとできてから早2年、いい加減お嫁さんくらい作ってもらいたいがリカルドはさらさらそんな気もない。

「嫌だ。」

 そう言ってふい、とよそを向いたリカルドに深いため息をついた執事は今お見合いしてほしいと名乗り出ている女性の写真を並べる。どれも綺麗で普通の男ならぜひやりたいと思うものだろうがリカルドはまったくもって興味ないようでよそを向いたまま子供のように頬を膨らませている。なんだかなんだとこう言ったところがあるから困る。傭兵を辞めてから結構わがままになったなと思って執事はがみがみと説教を始めた。

「あーあー聞こえない!」
「リカルド様!」
「知らん。興味ない。それにお前が傭兵を辞めたし国民のあれがあるからと髭もそったしちゃんとしてるからいいだろう。」

 下から睨むが執事はわがままをいわないでください、と言ってお見合い女性を呼んでこようとする。

「嫌だと言っているだろう。」
「リカルド様にも好きな人がいるのは知っています、ですがそれは男性だから許されるはずがないでしょう。」
「じゃあ性転換手術する。」
「はあ‥それもだめです!」
「どうしたら許してくれるんだ。」
「とにかく!正式な婚約を望んでいるんです私も臣下の人たちも!ですから今月中には決めてくださいね!」

そう言ってお見合い写真を残したまま執事は部屋を出ていった。ぼーっと眺めるがやっぱり興味がわかないからその写真を閉じて邪魔にならないところに片づける。どうせ捨てるんだけれど。

 臣下からも色々言われていてリカルドもストレスがたまってくるもの。後継ぎなんて他の人がすればいい、とか思っているけれどそれを許してくれるはずもない。ため息をついてソファに座ってクッションを握り締める。

 すると数分後久しぶりの来客があって、それはルカ達だった。ちょうどここに来たから数日間厄介になるらしく、挨拶をしに来たのだという。

「久しぶりですね、リカルドさん。先ほどまた沢山のお見合い写真持った臣下の人がこちらに向かってましたよ?」
「‥鍵を閉めてくれ。」
「悪いじゃないですか?結婚しないですか。」
「‥‥嫌だ。」

 明らかにテンションの低いリカルドに苦笑いを浮かべたアンジュがぼーっと一点を見つめるリカルドを覗く。

「うちらが悩み聞いたるで?」
「‥‥それが‥最近いい加減次の代を早く生んだ方がいいからと、婚約をさせたいんだが‥。」
「いいじゃないですか‥。」
「その‥あれなんだ‥‥。」
「あ、今言うのなんだけど、今日スパーダも来るらしいわよ。」
「‥‥‥!?」

 その反応ににやにやしながらイリアとアンジュはリカルドを見ている。それに気付かれた、と思ってリカルドは目線をそらす。

「そうよねー、スパーダのこと好きだもんねー。」
「スパーダ君も成人して良い男になってたわよ。リカルドさん。」
「‥‥そ、そうか‥。」

 平装を装うとするがもうばれていて、リカルドは小さく息をついた途端また来客を知らせるベルが鳴った。それにリカルドは体を硬くした。

「よ、久しぶりリカルド。」
「‥あ、あぁ、ひ、久しぶりだな。」

 ひきつった笑顔でそう言うリカルドにどうしたんだとリカルドの顔を覗くと慌てたようにリカルドは視線を彷徨わせる。不審なリカルドの動きにスパーダはリカルドの名前を呼ぶ。

「ななななんだ!?」
「‥おいリカルドお前熱あるのか?」
「熱なんてない‥!」
「顔真っ赤だぞ?」
「あそう言えばちょっと用事があるから私たちは街に出てくるからスパーダよろしく。」
「わかった。」

 リカルドは助けを請うような表情をルカ達に向けるが笑顔でそれをスルーされて改めて今の状況に挙動不審になる。
 ここ最近リカルドの赤面症は酷くなりつつなる。

「リカルドが造ったんだよな、この街‥。」
「そうだ‥。」
「すげえよなあ‥。」
「ベルフォルマは‥何をしているんだ?」
「オレ?んーこれといってはなんもしてねえんだけど‥。」
「そうなのか‥。」

 だいぶ気分が楽になってきたのかリカルドは話を続けていたら突然スパーダがきいてきた。

「あんたって、いい加減結婚しねえの?」
「え、あ‥あぁ‥お見合いは‥してるけど‥まだ‥‥。」
「そっか‥好きな人、見つかった?」

 好きなのは貴様だ!、とか頭の中で一人叫びながらリカルドは首を横に振る。よく見たら身長も高くなっていて、自分よりもちょっと目線が高い。幼さはもうなくて大人っぽくなっていてどき、と胸が高鳴る。

「ふーん、でも大変だろ?いい加減、婚約とか考えないといけないから。」
「‥‥そうだな‥そういった事、興味が、な、ないから‥。」
「どうしたんだ?リカルドさっきから様子おかしいけど。」
「‥気の所為だ‥。多分‥。」
「多分?」
「い、いや‥‥。」

うつむいて無言になったリカルドの額に触れる。

「熱はないよな?」
「‥‥っ!」

 どうしようもなく恥ずかしくなってリカルドはクッションを握り締めたまま震えている。その様子にスパーダは顔をすぐ近くまで寄せて怪訝そうにこちらを見ている。

「うーん、どうしたんだ?本当リカルド大丈夫か?」
「何でもない‥本当になんでもないんだ‥‥。」

 それから無言の間が続く。どうしようもなくなってリカルドは震える唇を開いた。

「そ、その‥‥ベルフォルマ‥はその‥あの‥結婚とか‥していないのか?」
「オレ?」
「あぁ‥結婚‥。」
「してるわけねえって。」
「へ、変なこと‥聞くけれど‥その‥好きな、ひ、人とか‥。」

そう言うとスパーダは意外なことを聞かれた、と目を丸くしたがすぐに笑って返事を返した。

「いるぜ。」
「‥‥ほ、んとうか?」
「あぁ。そうだなーとにかく照れ屋で可愛い。でもいつもぶすっとしててちょっとわがまま。」

 もう諦めようと、リカルドはまた俯いてしまった。

「それで黒髪ロングに肌も白くて容姿はオレ好みかも。」

 その言葉にびっくりしたようにリカルドは目線をスパーダに戻す。これが勘違いだったら相当恥ずかしいが、そのまま呆然としたような表情でスパーダを見ている。

「そんで今クッション握ってぼけーっとしてる目の前の人。」
「‥‥え、あ‥べ、ベルフォルマ‥?」
「やっとわかった?」
「‥いじわるだ‥‥ベルフォルマは‥。」

 クッションをスパーダになげつけてリカルドは震えながらうるさいとか言いながら顔を真っ赤にしている。

「いててて、そんな怒るなって!」
「意地悪すること、ないだろう‥。」
「悪かったって。」

そう言ってスパーダに抱き寄せられて唇が重なる。たどたどしいリカルドの舌使いにスパーダは案外初めてだったり、とか思いながらリカルドの舌を絡めて口内を犯す。
 息が上がってリカルドは苦しげに整った眉を寄せながらスパーダの服を握った。その腰を抱き寄せて髪を梳く唇を解放したら、リカルドはへなり、とスパーダにもたれかかった。
 とその時執事と臣下が入ってきて固まった。その手には大量のお見合い写真。

「リ、リカルド、様‥!!?」
「貴様リカルド様になにをした!」
「ち、違う!落ち着け!」

 スパーダは焦って訳を話すが殺気が立ち込める。リカルドは止めに入ってなんとかその場を沈めた。

「リカルド様、それでこの方は‥?」
「‥俺の‥好きな‥人‥だ‥。」
「‥‥‥リカルド様!駄目だと言っているじゃないですか!」

 その言葉にリカルドはやっぱり、と目線を落とす。

「それでも、どうして好きな人と‥付き合ったら‥だめ、なのか‥?」
「あなたはこの国の中心なんです。ですから」
「でも‥でも‥‥。」

 うつむいて微かにリカルドの肩が震えている。膝の上で握りしめられている手の甲に滴が落ちる。泣いているのがわかってスパーダは口を開いた

「そこまで、リカルドを好きでもない奴と婚約結ばせたってリカルドは悲しむだけだ。それだったらオレが傍にいるし、後継者なんて他にいるだろ。」
「ですが!」
「リカルドはオレを愛してくれてる、それでオレもリカルドの事を愛してる、それ以外に何の理由がいる?」

 そう言うと臣下達と執事は黙って、ちょっとしてから口を開いた。

「わかりました、リカルド様、許してあげますけど、スパーダさんもちゃんと働いてください。それが条件です。」
「‥‥許してくれるのか‥?」
「リカルド様がなくお姿は見ていられませんから。すみませんでした。それでもちゃんと、働いてくださいね。」
「ありが、とう‥。」
「いいえ。」

そう言って笑って執事はお茶を淹れてきますとその場を去った。二人になった部屋でリカルドは照れ臭そうに笑いながら、涙を手で拭って、言った。

「愛して‥る‥スパーダ。」

 まるで夢を見ているようだった、それでもスパーダがこうして抱きしめてくれているのも現実で起こっていることでくすぐったい今の関係。
 また甘く唇を塞いでリカルドの頬を撫ぜてすぐに唇を離して至近距離で笑い合う。




そしてあなたは甘く囁くの
(愛してる。って)







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