tragedy


死ネタ
ED後








しんしん、と降り続く雪
北の海に面したこの島は冬になれば雪が降り、豪雪地帯になる。
息を切らして、探すのは愛しい彼の姿。
白い息が空気に溶けて消える。


彼がいなくなったと、数年昔に旅をした仲間であるルカ達から連絡が入って、俺はすぐに彼のいる島へ向かったのだった。急成長して大きくなった街を出て真っ白な平原をただ歩いていく。
病気でしばらく、意識をなくして生死をさまよっていたが数週間前に目を覚ました。
それでももう長くは生きられないと伝えられた数日後に彼は忽然と姿を消したのだった。

こんな真冬に、重い病気にかかった彼が見つかったとしてももう生きているのはごくわずかな確立だろう。
それでも少しの希望を持って彼を探した。

数時間、歩き続けていたら、冬にだけ咲くといわれる、青白い綺麗な花を咲かす
花畑をみつけた。雪がふることで咲き出す花。まだ名前もなかった。一面に広がるその花の中。
花に包まれるように倒れる彼の姿。
駆け寄って体を起こすがその体は少しも温かくなく、心音を聞いてもただ無音で。
名前を呼んでも、どうしても、返事もなにもなくただ雪が音を吸って無音だけがただ響いていた。

よく見れば素足のままで凍傷を患って青くなった足は痛々しい。

「‥リカルド‥‥。」

小さく名前を呼んでもやっぱり、反応はない。
髪を撫でて、その冷たい体を抱きしめた。

病気になる前、去年の今頃だっただろうか。
久しぶりに電話をしたらちょっとだけ上機嫌で、いろんなことを話した。
そこで、確かにこの花の話をきいた。
最近になって見つかった、だからいつか俺にも見せたい。
なんて嬉しそうに言っていた。そのすぐ後に病気で倒れた。
それでも見舞いに行くと無理して大丈夫なんて言うから部下に怒られたりしていた。それでも傭兵業を辞めて沢山の人とを深い関係をもつようになって、彼はとても変わった。
表情もちょっとだけれど豊かになって、すねたり、笑ったり、怒ったり、喜んだり。
自分の前だけだけれどそういった風に表情を見せるようになった。

きっとここに来たのは、最期でも、約束したように花を見せてあげたかった、それならせめてそこで死んで、俺に見つけてもらえれば、と思ったからだろうか。

数日後、冗談混じりに葬儀はしなくていいと言っていた彼の言うとおりに葬儀は行わず、
この花の咲く草原に、墓が建てられた。独りさみしく立つその墓石。
それはまさに最期にみた彼のように。

最期まで見届けてあげられなかった。
ただそう悔しくて彼の墓の前で手を強く握りしめた。

生まれた時から親に見放されてひとりで生きていた彼にせめて、
せめて足りないかもしれないけれど俺でよかったなら、一緒に生きて行けたなら、
と思えば思うほど、辛くて、苦しくて、膝をついて俺はただ静かに泣いた。

「ごめん‥ごめんな、リカルド‥最期まで‥ひとりにさせちまって‥。」

唇を噛み締めて、そっと彼の名前を指でなぞり、呟くように言う。

「愛してる‥リカルド。」

もういつもみたいに、照れながら自分も、なんて返事返ってくるはずもない。


間違っているのだろうけれど、これが彼の元へ近づける手段ならば俺はどうだってしようと、ただ思って腰にさしていた剣を自らの腹部につきたてた。
痛みが走った、これ以上に彼は辛かったんだろうか。と考えながら俺は剣を抜いてそのまま花の中に倒れた。

「ご、めんな‥こんな形に‥なって‥。ごめん‥今いくから、リカルド‥。」

口の中に鉄の味が広がって、目の前が滲んでぼやけてそのまま俺の意識は真っ白になった。


せめて、せめて次に落ちた世界で、彼、リカルドと一緒の世界でふたり生きていけたらいいと切に願いながら。





ふわふわする意識の中
あの花が咲く世界

あの後姿
自分の存在に気づいて振り返る。

「リカルド!」

びっくしりた後、すぐに自分にしか見せない笑顔で駆け寄る。
きっと彼が元気だったら、ここでふたりでこうしていたれたのか。
ここが現実なのかどこかもわからないまま俺はそっとリカルドに触れた。

「どうした?」
「‥次は一緒だから、な。」
「ふふっ‥ありがとう。」

体を抱きしめたら照れながら背中に腕を回してきて。
どうしようもなく愛おしいリカルドにキスを落としてそのまま名もない花のベッドに倒れて向き合う形で見つめ合う。

「愛してる、絶対に離さない、リカルド。」
「ベルフォルマ、くすぐったい‥。」

そう言いながら笑うリカルドをまた抱きしめてそのまま瞼を下ろした。

小指をからめ、ずっと一緒だと、約束をしてまた笑い合った。










どんな悲劇でもいい
(君と一緒にいられれば、幸せだと)


















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