*明るめの一方通行
どうしていつもこういう時にかぎって思い切ったことができないんだろうと、度胸のない自分にスパーダはため息をついた。
隣でうつろうつろしているリカルドを見ながら理性が限界だったが、もし抱き寄せたり何かした時にすごく嫌な顔をされたらどうしようかなんて考えてしまうからほらまた、一歩手前で止まってしまっているままではないか。
そんな自分にイライラしてきてスパーダはうなだれる。
そうしていたらいよいよリカルドは寝息を立て始めて自分の方に凭れかかってくる。ここまで気を許しているということはもしかしたら遠まわしに好きだということなのか、なんて行き過ぎた思考をぐるぐると彷徨わせているが実際リカルドがそこまで考えるだろうか。恋愛ごとにはあまり興味がなさそうだし、なんだかんだいって天然なところが多々見受けられる。そう考えるとやっぱりスパーダは手を出せずにいて、数時間が経った。
そこでリカルドは目が覚めたようで目を開けて状況を確認する。すぐ近くにあるスパーダの寝顔。
胸が高くなってリカルドは慌てたように体をどけようとしたが、スパーダの腕に抱かれてしまっているから身動きがとれない。きっと寝ている時に不意に抱き締めるような形になったのだろう。
どうしようもなくなっているとスパーダは目を覚まして顔を起こす。そして近くで顔を真っ赤にしてあたふたしているリカルドを見て、何かが切れる音がして、気づいたらリカルドを押し倒していた。
「ベ、ルフォルマ‥!?」
そのまま唇を奪い、舌をリカルドの口に差し込む。
「ふ、んっ‥!んんっ!!」
体をよじりながらリカルドはスパーダの体を押し返すが腕っ節ではスパーダの方が強くてどうしようもなくなって余計に苦しくなる。
ぎゅっと手を握り締めれば、唇が解放される。
「はぁ‥や、やめろ‥ベルフォルマ‥あっ‥!」
「無理だよ‥あんたがあんな顔するから‥。」
そう言いながらリカルドの服に手をかけて脱がし始める。
「や‥やめ、駄目だ‥!」
首を振りながらリカルドは必死に抵抗するけれど力が抜けきった体ではどうしようもない。ぐちゃぐちゃになった思考でどうしたらいいか考えていたら体をひょいっと持ち上げられる。そのままベッドに移動してさらされた首筋に吸いつかれた。体をベッドに押し倒した時に解けかけていたリカルドの髪紐がするりと解けて、白いシーツの上に散らばる。そんな状態で顔を真っ赤にして困ったような表情をされては抑えたくても抑えられない。スパーダは一息ついた後、さらされたリカルドの細い腰に手を這わせる。
「いや‥やっ‥!」
「リカルド‥?」
よく見ればリカルドの頬にいくつもの涙が伝うのが見えて、スパーダは手を止める。
「ご、ごめん‥。」
「ベルフォルマ‥‥。」
「本当に嫌ならやめるけ‥、リカルド?」
リカルドが腕を伸ばしてスパーダに抱きついて小さい声で言う。
「ま、まだ‥ちゃんと‥好きと‥聞いていないから‥。その‥あの‥。」
「そうだったな‥ごめん‥。好きだ‥リカルド‥。」
そのまままた唇を重ねて、リカルドは照れ臭そうに笑いながらスパーダに身をゆだねた。
「ひ‥あっ、あ、あぁ!」
昼からこんなことするのは間違っているのだろうけれど、もう押さえられたものではない。スパーダはリカルドを突き上げながら優しくリカルドの頬や頭を撫でてびくびくと、緊張からか力んでいるリカルドを落ち着かせるように名前を呼ぶ。
「は、リカルド、大丈夫だ、なるべく痛くないようにするから‥。」
「あっ、あぁっ!!や、やんっ!ベルフォルマっ!」
可愛いなんて思いながら律動を速める。すると一段とリカルドの嬌声が高くなる。
「ひっあ‥あんっ‥す、ぱーだ‥!」
「今‥名前で‥呼んでくれた?」
「っうるさ‥ひっ!あ!」
「もう一回呼んでくれ、リカルド。」
恥ずかしいのか枕を掴んで顔を横向けて口を塞ぐ。
「声聞かせろよ。」
枕を取り上げてリカルドは甲高い声を上げてスパーダを睨むが顔を真っ赤にして目を潤ませている状態では無意味に等しかった。わざとリカルドの感じるところを突き上げてやれば塞ぐものがなくなったリカルドはひっきりなしに喘ぐ。
「スパーダ!‥あっあぁっ!やぁっ!」
「ふ‥っリカルド‥は、やばそんな顔反則‥。」
一気に熱が高まってスパーダはリカルドの腰を掴んで激しく揺らす。
腰を反らせ、リカルドも限界が近いのか、びくびくと体を震わせてスパーダの背中に腕を回す。
「はっ‥あぁっ!イく‥っ!!あぁっスパーダ、スパーダ‥!」
「オレも‥やばっ‥。」
同時に限界を迎えてリカルドの中に熱を吐きだしそれに感じたのかリカルドは熱い息を吐いて、びく、と体を跳ねさせて自らの腹部に白濁を吐きだした。
「大丈夫か‥?」
「あぁ‥。」
自身を引き抜いて後処理をした後、そのままベットに寝転ぶ。
リカルドの体を抱き寄せるとリカルドは珍しく大人しくしたままするりとスパーダに抱きつく。
頭を撫でながらスパーダは楽しそうに笑う。無言のまま肩に顔を埋めたまま動かないリカルドに声をかける。
「どうしたんだよ?なんか喋んないのか?」
「‥‥うるさい‥。」
「何拗ねてんだよ‥。」
「‥ふ、ふん‥‥馬鹿‥。」
すごく小さい声でそのまま言葉を続ける。
「こういうこと‥は、はじめてだったんだ‥。」
それが恥ずかしいのだろう、顔を見せようともしない。
そんなリカルドの体を少しだけ離して顔を覗き込む。まだ顔は真っ赤で目線が合うがすぐに慌ててリカルドは目をそらしたままぶすっとしている。スパーダは苦笑いしながらなだめるように言う。
「でも俺が初めてだとかすっげ嬉しい。」
頬にキスを落としてまた小さく馬鹿、なんて言ったリカルドを抱き寄せて瞼を下ろした。
意識が飛ぶ前にリカルドの小さな声が聞こえた。
「す、すきだ‥。」
ああ、なんてこんなにも可愛いんだろう。
幸せの定義とか愛の理論とかそんな難しいものより、ただ体温を感じたい
(だから抱きしめ君を離さないように)