まるで、夢のよう




シノヒナ












その人は、ずっと身長も高くて、静かで、頭もよくて、なんでもできてしまう、ずっと遠い存在だった。
素顔を見た事のある人がいないくらい、その人は、謎に包まれていた。
でも一緒の班になって、優しく支えてくれる、その姿にきっと私は惹かれていた。

土砂降りの雨の日、その日はキバくんが休みで、私と彼だけの任務
そこで敵の攻撃にあいそうになっていた私を彼は音もなくあらわれて傷つきながらも庇って悲鳴を上げて倒れ



「大丈夫か。」

低い声でそう言った彼は、いつも深くかぶっているパーカーを脱いで、サングラスも割れて素顔が見えている
鋭い、その目つき、でもずっと綺麗な顔立ちであった
手を引かれて立ち上がらせる。
どきり、と高鳴る胸
顔が真っ赤になって、慌てて目を逸らす。ずっとその瞳に視線を合わせていたら、染められそうで

「あ、ありがとう‥シノくん‥。」
「気にするな。とりあえず目的は果たした、戻るぞ。」

そのまま街に着いて解散となって、私と、彼の家は反対にあるから普通ならここでお別れ
でも自分では止めることができず、その服を引っ張って、私は彼の名前を呼んでいた

なにを、言うというのか、まとまってもないのに

「‥どうした、ヒナタ。」
「あ、あの、少しだけでいいの‥お話、できたら‥って‥。」
「‥‥‥。」

無言でヒナタを見て、小さく息を吸いこんで彼は返事を言う

「構わないが。」
「‥い、いいの?」
「あぁ、明日は用事も任務もないからな。ヒナタはどうなんだ?」
「私も、なにもないよ。」

こうしてちゃんと話をするのなんていつぶりだろう、もしかしたら初めてかもしれない。
ばくばく、と大きく脈打つ心臓のあたりを押さえながら雨の止んだ帰り道、私は彼の隣に並んで一緒に歩きな

がら、何でもない話をする。本心を伝えることなんて、中々できなくて
そうしていると彼の家のすぐ近くまできて、門の前で立ち止まった彼に並んで私も立ち止まった

「もう少しゆっくりしたいならば、家に上がるか?」
「‥えっ、で、でも悪いよ‥。迷惑だろうし‥。」
「なにも迷惑ではない」

と言って門を開けた彼に続いて私は家の中にはいる。しばらく長い庭の道を抜けて家に入り、彼の部屋に通さ

れる。
綺麗に整っている、黒を基調とした部屋であった
どこにいればいいのかわからなくて、おろおろとしていた私に自由にしてくれていいと、言ってくれて、彼が

座った隣に座る

「それで、何か言いたそうだが?」

急に彼に話を振られる
鈍感なところもあるかと思えば、人の心を読むのは、簡単にやってしまう彼は視線をこちらに向ける

「あの‥‥あの‥。」

そう言い淀んだ私を静かに聴いてくれるのは彼くらいだ。キバくんだったり他の子と離すと早く話せとせかさ

れてなにも言えないのだけれど、彼だけは私のペースに合わせてくれた

「‥わ、わたしね‥あの、ね‥。」

倒れそうなくらい、顔が熱い、脈が速い
思い切って私は、言葉を告げた

「‥私、シノくんの‥ことが‥すき、なの‥!」

その言葉に私は彼の顔が見ていられなくなって、目をぎゅっとつむったまま、静寂が襲う
もしかしたら、嫌われたのかな、そう思うと、なぜか、涙があふれてしまう

「‥‥俺もだ。」

その言葉とともに冷たくて白い指先が私の頬を撫ぜて涙を拭ってくれる

「ヒナタ」
「‥‥シノ、くん?」
「目を、あけろ。」

優しい声で言われてゆっくりと私は彼の視線と合わせれば、綺麗に、頬笑んでいた
いつもは口元まである服の前が寛げられていて、薄い唇が、もう一度名前を呼んだ

何が起こったかもう訳が分からなくて、あとを追うようにあふれ出す涙
頬に添えられた、手が私の唇に触れる。

「なぜ、泣いている、なにも悲しいことではないだろう。」
「‥ごめん、ね‥うん、なんだか、とまらないの‥。」
「そうか。」

そう言うと、端正で綺麗な顔がゆっくりと近づいてくる。それと比例するように高鳴る、胸
瞼をゆっくり下ろすと、少し冷たい唇が私の唇と重なる
触れて、すぐに離れてもう一度瞼を開ければ、少しだけ、頬の赤くなった彼がいた
至近距離で見つめ合って、とけてしまいそうなほど体が熱くて、もう一度キスをされる
先ほどよりも、ずっと甘いキス
なにもかもわからなくなってそのまま彼に身を預ければ、唇が離れそのまま抱き締められる

「‥は‥シノ、くん?」
「突然、驚いただろう、すまない。」
「‥ううん、すごく、嬉しい、よ‥。」

嬉しくなって、どうしようもなくなって笑ってゆっくりとその背中に腕を回して、頬笑む
初めてだった、キス、甘くて、どうしようもなく嬉しくて、幸せで
そのまま傍にあったベッドで横になってきっとつかれていたのだろう、眠ってしまった彼の頬にすこしだけ触

れてみる
夢のようで、現実で今本当にこんなことがおこってるのがしんじられなくて、少し頬をつねって見たら確かに

痛くて

私は、そっと彼に、ぎゅっと抱き付いた











まるで、夢のよう
(あなたのその顔に触れて、そっとキスをするの)

















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