食卓にて愛を語る




『そう』

『だからね善吉ちゃん。僕は思うんだ』
『これはきっと混じり気のない愛だなって』

『だって善吉ちゃんを思うとさ、』
『何故だか御飯も喉を通らないんだ!』

『これって、つまりは愛だろう?』


そんな胡散臭い事を言いながら、勝手に人の家に入ってきて勝手に座って勝手に夕飯を食べている球磨川。

その球磨川の箸使いによって、べちゃべちゃに飛び散ったお母さん特製の海老チリが何とも痛ましい。
どう食べたらそうなるのか、目の前で見ていたのに何故だかよく分からない。というか理解したくない。
ああ、球磨川の箸も手も口の周りも茶碗も皿も、何もかもが赤い。怖ぇ。

どろりと口元を伝うチリソースをも拭わずに、飄々とした雰囲気と声のままで本気なのか嘘なのかよく分からない話は続く。

『んー』
『善吉ちゃんには分かんないかなぁ』
『この繊細な恋心がさ』

べらべらと勝手に話される内容につい口を挟んでしまう。

「おい…球磨川…、何が繊細な恋心だ何が御飯も喉を通らない、だ!」
「んなこと言って普通に食べてんじゃねぇか!しかも人の家で!勝手に!」

何となくズレた気がするが、心からのツッコミをぶちまける。それを聞いた球磨川は、いつもの笑顔を浮かべたままゆっくりと箸を置いた。
思わず身構える。そうだ。正直何をしに来たんだかさっぱり分からないんだ。注意深く次の挙動を観察する。


そして球磨川は、整っているのに異様に不気味なその顔を、俺の右隣に座って成り行きを見守っていたお母さんの方に向けて、


『あ、人吉先生。おかわり下さい』



いつの間にか空になっていた茶碗を、悪びれる事なく差し出した。








帰れ。
もうお前、帰れ。









胡散臭さ全開な、愛の告白。








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