撃ち殺すまでの数分間




愛してたぜ。
5000ドルの賞金首、サンダウン・キッド。


…ああ、あれだけ派手にやったんだ。今は額ももうちっと上がってるかもな。


…最初はよ、濡れ衣に違いねぇと思ってさ。あんたがあんな殺しをするとは考えにくかった。

それでまあ、色々調べたんだ。叩けば何かしらキナ臭いモンが出てくるだろうってな。けど調べれば調べるほど、証拠も痕跡も俺自身の感覚も、あんたが犯人だって言っててよ。
焦ったぜ。あんたはどんな人間に濡れ衣着せられてんだよってな。


でもな、ここより西の街で、人が死んだだろ?アレで死んだ奴の家族が殺しの現場を見てたんだよ。あんたをはめても何の得もしない、目撃者だ。

見てたガキが全部話してくれたぜ、青目のおじちゃん。あんなパパは死んで当然なんだ、おじちゃんは助けてくれたんだ、だとよ。
よかったな。あのガキはあんたに感謝してたぜ。母親は泣いてたけどよ。金稼ぐ親父がいなくなったんだ。泣くわな。





なあキッド。
どいつもちいっとばかし気性は荒かっただけだぜ、あんたが殺した男共はよ。
善人なんて口が裂けても言えない連中だったけどよ、銃も持ってない状況で殺されるほどの極悪人でもなかったさ。



…ああ、勘違いするなよ?
敵討ちなんて言い出さねぇさ、アホらしい。どいつもこいつもいつ殺されてもおかしくない、はみ出しモンではあったしな。あんたに当たるのは筋違いだ。

そいつらの事はどうだっていいんだ。仲間意識だなんて崇高そうなモンもねぇしな。



俺はなぁキッド。
安っぽい衝動に任せて軽く人を殺すあんたも、その後も考えないあんたも、価値観がどんどんズレてくあんたも、額に銃突き付けられて微笑んでるあんたも…もう、見たくねぇだけだ。勝手だがな。

なあ笑うなよ、泣けてくるだろ?
…あんたは、どっからそうなっちまったんだろうなぁ。…死にたがってるあんたを殺すなんて、不本意極まりねぇよ。

…俺は出来れば、違う形であんたとの決着をつけたかった。




まあ、…ウダウダ言ってても仕方ない、か。じゃあな。地獄があったらまた会おうぜ。


愛してたよ、キッド。








愛してるよ。







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