始まりは猥談から




「やっぱ、巨乳っていいかもな」


よく分からんが、アキラがなんか真顔で言い出した。ひとり言の様にそう言ったけど、言いきった後に、こちらに目を向けたので多分オレに言ってるんだろう。いきなりのワイ談なんて珍しいが、せっかくだからノッてみる。


「いやいや、貧乳もいいモンだろ」


「あン?高原お前、この前は、出るとこ出たボインのねーちゃんが好きだって言ってなかったか?」
「あー、そうだっけ?」


…そういえば、前はそんなことを言ったような。
最近変わったんだよな。何でだろう。けどまあ、変わっちまったもんは変わっちまったしな。ん?でも、

「アキラも、胸ばっかデカイより尻が重要だーつってたよな?」

「いや尻は大事だろ尻は」
「大事だけどよ」


尻は大事。男ならしょうがない。


「ああ、大事だよな……っと、違う違う。…尻はまあ別としてだな…、最近巨乳もいいなって思ったんだよ」
「オレは逆に、貧乳の良さに気づいたぜ」


随分とキレイに入れ違ったな。二人してどんな変化だ。


「…服着てても服の皺とかでデカイの分かってエロいし、脱いだら脱いだでそっちに目がいくんだよ」


巨乳の良さを語り始めたアキラに、それじゃあせっかくだから、ということで貧乳の良さを語ってみる。


「ぺったらな胸に、薄い乳首が乗ってるのとか、すげぇエロいって!」

そうそう、例えば。


「こんな感じ」

ぺたり、と目の前にあったアキラの薄い胸に右手を当てる。


「………ッおま、馬鹿原!何しやがる!」

怒鳴られながら、アキラ、服装的に丸見えなんだよなーとノンキに考えた。
しかし薄いな、見かけ通り。
筋肉はついてるけどまだまだだ。もっと鍛えろ。


「……チッ…薄いだのなんだのそんな事言うけどなぁ!!」

ん?今読まれたか?いや口に出したかも。まあいいか。


「お前がデケぇだけだろ!」

とかアキラが叫ぶのと同時にオレの服のジッパーを一気に引っ下げて、勢い良く胸をわし掴んでた。
うお、早業。


「………、…」

思いっきり掴んで一瞬固まったアキラが、黙ってぐにぐにぐにと胸を揉み始めた。
何でだ。

「…アキラ?」
「……………………」
「おーい、アーキーラー」


ただただ揉まれるだけなので、手持ちぶさただ。なんとなく、離すタイミングを逃した右手を動かしてみる。


「………ッつ…」

怒るかと思ったら何も言わずにただ胸を揉んでるので、そのまんま続けてみた。

ぺたぺたと触る。やっぱ薄い。
楽しくなってきたので、アキラの胸に走るでかい傷口に沿ってなぞってみる。すると、ヒクッと揺れるアキラの喉。なんか、そわそわする。


うろうろと動かしていた指が乳首辺りをかすったら、赤い顔して、は…っと息を吐かれた。何かを我慢するみたいに、眉を寄せてるアキラに思わずごくりと喉が鳴る。
ちょっと気まずくなって目線が泳いだら、太ももをこ擦り合わせてるのが見えた。

「あ」
「…………」

「勃った?」
「……ッ!るせぇッ!」


「勃ってるよな?つかアキラ、オレ胸しか触ってな」
「……ッあーあー勃つよ!そりゃ勃つよ!!好きな奴に触って触られてすりゃあな!」


すき。
好きな奴。
…えーと。…あー……オレ?


「……お前が!そういう風にオレを見てねーのは知ってるよ!けど、」
「え。オレ、アキラ好きだけど」



アキラが、たっぷり1分くらいは固まった。



「………あ?」
「いや、オレもアキラ好きだぜ」

「…はぁ…?ウソつくんじゃねーよ。ひとっ欠片もそんなこと考えてなかったよお前」


見えてんだよ。と不機嫌そうに吐き捨てられる。
アキラひでぇな。信じろ。


「いやだってホラ。なんかアキラ見てたら、オレも勃ったし」


体って分かりやすい。

なんかごちゃごちゃ考えるのは苦手だ。なら、体とか動きとかを見た方がよく分かるよな。

うん。
アキラのこと好きなんだろうな、オレ。たった今気づいたぜ。




色の変わった目でじぃッとこっちを見ていたアキラが、深く、深ーくため息を吐いてがっくりと肩を落とした。え。



「…はっ……本当に、両思いだぜ…ちくしょー、…あーもう、バカ…」


とか言った。

両思いならいいだろ。
なんで恨めしそうにこっち見るんだ。


まあ顔は赤いしちょっと涙目だから、かわいいが。
…………あ、やべ。



「なあアキラー」
「…………何だよ……」

「オレ、勃ちっぱなんだけどさ」
「はぁッ…!?」


アキラもさっき勃ってたし。両思いでコイビト同士って事なら抜き合いくらい、いいんじゃねーかな。


「アキラもさっき勃」
「みなまで言うんじゃねぇッ!!」








アキラ(自覚済み)→←高原(無自覚)





ここから蛇足。


「なおり草、随分集まりましたねー、サンダウンさん。そろそろ、お二人と合流しましょうか?」
「……………」

「……サンダウンさん?」
「………もう暫く、採っていよう」

「あ、はい!備えあれば憂いなしって言いますもんね。そうしましょう。なおり草は長持ちしますし」
「ああ、…それに」

「それに?」
「…ユンには、……まだ早いだろう」

「…?何だか、よく分からないんですが…そうなんですか…?」
「そうだ」

「???……はい、サンダウンさんがそう言うなら、多分そうだと思います」
「……ああ」





サンダウンの神ガード。








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