食べない食べられない |
「…例えばさ、高原」 「お?なんだよいきなり。何が始まるんだ?」 「いやいや大した話じゃねーよ。なに、ただの軽ーい質問、雑談、暇潰しだって」 「ま、別にいいけどよ」 「じゃ続けるぜ?例えば、腹減ってるお前の目の前に、すっげー旨そうな食いモンがあるとする」 「ふんふん」 「その食いモンには別に毒とかはねーし、食われて困る様な奴もいない。そんな状況になったら…高原、お前どうする?」 「そりゃ、当然食うだろ」 「………」 「…………?」 「……だよなぁ。オレだってそうだしな」 「腹減ってて目の前に食いモンあるんだろ?食うよな、フツー」 「…いや、世の中にゃあ食いたくて食いたくて仕方ない癖に、我慢しちまうような、オトナって奴がいるんだよなー」 「なんだそりゃ。食いたきゃ食えばいい話だろ」 「めんどくせー思いとか、ネガティブな考え方とか、色々あんだろうよ」 「ほー……そんなヤツ、いんのかねぇ」 「結構いるぜー?……サンダウンのオッサン。とか、な」 「へ?サンダウン?そうか?」 「ああ、オレにはそう見えた。手ぇ伸ばせば届くモンをまったく食べずにきた癖に、いざそれが見えなくなったらぐるぐる考え込んじまうような。そんな感じだ、あのオッサン」 「むう…それはまた、サンダウン殿も難儀な方でござるな」 「おう、おぼろ丸。見回りお疲れさん。………旨そうな食いモン見つけたら、嬉しそうに主人に持っていきそう奴には、言われたくねーかもな。あのオッサンも」 「…むう?」 「……アキラ殿は時折、難解な問い掛けを致しまする…」 「…なあアキラ。オレ、今の話さっぱり分かんねぇんだが。もう少し、分かりやすく」 「……あー…、食いたいのに食えないオッサンも、食われたそうなのに食われない黒服…じゃなかった。食いモンも、結構かわいそーって話さ」 「後は…、食う食わないのステージに上がらねーで満足そうな奴もいるんだな、ってとこか」 「……やっぱ分かんねぇな。…つまりサンダウンは、腹が減ってるってことか?」 「……もう、それでいいぜ…」 「……どうした。……何故、そんな目でこちらを見る?」 「あー…オッサン。お疲れさん、色々」 「…サンダウン殿、…あまりご無理はなされぬよう…」 「んーまあ、とりあえずコレでも食っとけよ!」 「…………何だ、一体…?」 普通に食べる高原とアキラさん。 食べたいけど食べられないサンダウンさん。 それ以前の問題かもしれないおぼろ丸。 |