魔王と子供のバレンタイン




ひゅう、と風の吹く寒空の下、公園のベンチに並んで座る。
マッドがベンチに座ると地面に足が届いていない。子供の様に、足をぷらぷらと揺らす姿は可愛い、とサンダウンは思う。思った後に考え直す。そういえば子供であった。

ぽつぽつと脈絡のない話をしていた途中、マッドが唐突に「あ」と声を上げた。
どうやら、思いがけずポケットに菓子が入っていた様だ。その見つけた菓子、板チョコを半分に割って渡してきたマッドが愛しくて仕方がない。
思わず泣きそうになった。それを見たマッドが何やら複雑そうな表情をして、更にポケットを探り飴まで渡してきた。有り難く頂いた。


並んで座り、並んでチョコを食べる。酷く幸せだと思う。
機嫌良さそうに、はぐはぐとチョコを食べるマッドは子供らしい。
しかし実に子供らしい仕草であるのに、マッドは口の周りにチョコを付けない。何故だ。食べ終わった後の銀紙を丸めて握り潰しながら、サンダウンは思う。
口の端にでもチョコを付けていたら舌で舐め取れるのに。

ぼんやりと想像をしながら、サンダウンはマッドの口元をじっと見る。
子供体温であるあの小さな手の熱で、チョコが溶ければいい。そして手に付けばいい。と念じながら手元も見るのだが、如何せんあの包み紙が邪魔だ。

「…なんだよ、半分やったじゃねえか」

あまりにも凝視し続けていた所為かまだ飢えていると思われたのだろうか。
…しょうがねえな、と溜め息まじりに言いながら、チョコを割り一欠片ほど差し出してきた。マッドが優しい。


つい嬉しくなって、差し出されたチョコをマッドの指ごと口に含む。
ぎゃあ、とマッドは悲鳴を上げたが、サンダウンは幸せだった。






ハッピー?バレンタイン








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