パターン2いいトコの次男坊




この家には何でもある。
この部屋にも何でもある。
やらなくてはいけない事だって沢山ある。
だが、悪い事では決してない。


勉強は割と悪くない。この家の者に相応しい教養だ礼節だ何だと言われるのは正直少し煩わしいが、知らない物を知るのは結構楽しい。本を読むのも考えを述べるのも、別段苦にはならない。
格式張った作法、テーブルマナー、言葉遣い。面倒な事この上ないが、こんな物も出来ないのかと馬鹿にされるのは癪だ。動き自体は見ていて気分のいいモンだしな。
馬術は特に好きだ。馬は綺麗だ。指示通りに動いてくれると、賢い彼らに認められているみたいで嬉しい。



そこそこ厳しくはある。けれど世間一般から見れば非常に恵まれた環境。
次男坊にこれだけ金をかけるのも珍しい。兄が家督を継いだら、片腕にでもするつもりだろうか。兄とは大して話した事もないが、特別に悪いとも言えない人だ。善良そうで、抜け目はない。家での評価は最良だ。

どうにも、順風満帆な未来が約束されてそうだ。

不満を見つけるのが難しい。
強いて不満を言うなら、何かが足りない気がする。
何だろうか。分からなくても、問題はないけど。


そんな事を考えていたらふと思い出した。

親に連れられ行った社交の場だというパーティー。花を愛でるだとかの名目で開かれたあの場所にあったのは、大人達の腹の探り合いだ。
大輪の薔薇を褒めながら、主催者のもてなしを受けながら、探りを入れて食い付くタイミングを図る。喉元に突き付けられる言葉をかわして、相手が見せた隙をついてとどめを刺す。刺したと思ったら、不意に避けられる様な、気の抜けない水面下の攻防。


あれは、いいなと思った。
もっと突き詰めた物が見てみたい。
どこかにないだろうか。

それこそ意地も手腕も知識も命も全部を賭ける様な、そんな物。もしも、いつか見つけられたら飛び込んでみようか。





金持ちの道楽ではないのだと言いたい







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