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オリジナル


ショタ×ショタコン×ショタになるはずだった物。性的対象はショタだけどその性癖は常識的にアウトだ犯罪だ変態だとか思ってる難儀なショタコンの話。それでいいじゃないかとか考えられない系なショタコン。思想が偏ってる。長い。






それは一種の襲撃だとどこかの誰かが言っていた気がする。

それは予期せぬ襲撃なのだと。これまでの人生でどれだけ努力をして平凡で平和な日常を重ねていようとも、どこからともなくやってくる避けようのない襲撃なのだと。
それを聞いた時は確か、特に感想もなく意見は人それぞれだなと軽く流した様に思う。そしてうっすらと、例え自分にそれがやってきてもそんな物騒な言葉は使わないだろうと考えた。


襲撃なんて、恋だ愛だとかいう何やら柔らかくてふわふわとした物には随分と似合わない。

などと呑気に考えていたあの頃の小さかった自分を殴りたい。
これは襲撃だ。紛れもない襲撃だ。
もしくは爆弾や爆薬などの爆発物だ。


まだ幼い少年に恋をするなんて、そもそも少年にしか欲情しないだなんて、長年積み上げてきた自分の常識への襲撃だ!



そもそも何が悪かったんだろう。
俺はどこでこうなったんだろう。


発端として考えられるのは何だろうと思いを馳せると、まず思い浮かぶのは初恋だろうか。
忘れもしないあの初恋は、小学生の時の同級生相手だった。前の席に座っていた彼は、元気にスカートめくりをしては女子に殴られ青痣をこさえているような子だった。日がな一日、とにかくあちこち走りまわっていた彼の後をついていくのが楽しかった。
そのうち恋だと意識して、性別の壁に頭を抱えて、悩んで、落ち込んだりもした。それでも小学校を卒業する辺りでその思いもうっすらと消えていき、ああ一過性のものだったんだと心底安堵した。

あのふわふわとした感情がまたそのうち自分にやってくるのを期待して、今度は可愛らしい女の子に恋するのを期待して、実に単純な自分はのんびりと構えていた。しかし気になる子はいつも同性で、年齢を重ねるうちに好きになる相手との年齢差が開いていった。

好きなのは男なんだろうと悟りかけながらも平和に過ごした高校生活。その生活も半ばにさしかかる頃、唐突に気づいてしまった。出会い頭の交通事故並みの衝撃を伴って。同性にしか興奮を抱かないのではなく、同性の子供にしか興奮しないのではないかと。



信じたくない事実に直面し、そこからとにかく足掻いた。
一般的な高校生ならば興奮するであろう類の雑誌をひっそりと買ってみた。男女問わず見てみたが、何故か気づいたら自分の筋肉辺りを省み始めていた。それでは駄目だろうと気が遠くなった。

その手の18禁と呼ばれる本とDVDも友人から借りた。あの頃、友人もまた高校生だったというのにどこからか手に入れていた物を必死に頼み込んで借りた。どこかしら生暖かい眼差しと仲間意識、ムッツリスケベというあまりありがたくない称号までついでに頂きつつも、残念ながらその称号に合う効果はなかった。

女性とあまり縁がなかったのも原因かと思い、とりあえず同級生や部活関係、近所の方など関わりのある女性と積極的に会話を試みた。結果、数人の親しい女性の友人が出来た。恋愛感情も欲も沸かず仕舞いだった。友人が増えた事自体は嬉しかったが、なんとも言えない絶望を味わった。

こうなれば、次元の違いの方が誰かに迷惑をかけたりしないだろうと二次元に頼ってみた。面白かった、感動した、続きが気になる、これはひどいという辺りの感想で落ち着いてしまった。 少年愛物は読んでいるうちに涙が止まらなくなりどうにも駄目だった。

もしや初恋を拗らせているだけではないかと思い立ち、今では普通の友人である初恋の彼を見つめてみた。怪訝そうな顔をされ、だんだんうろたえ始め、最終的には病気や怪我の心配までしてもらったが、ときめく何かはついぞ得られなかった。彼には幼少の頃からずっと迷惑ばかりかけている気がする。

藁にもすがる思いで、親子の嗜好が似ている事を期待し父の秘蔵の雑誌やAVを盗み見た。意外とマニアックだった。とりあえず父はコスプレ系統の物が好きな事だけは分かった。正直悪い事をしたと思う。勝手ながら父との距離が縮んだ気がした。



その辺りで、ああもう駄目なんだなと思った。

あんまりだ。俺が何をしたというんだ。
幼少期に何か事件があって大人相手がトラウマになっている訳でもないのに、何でこうなったんだ。

手を出した瞬間に犯罪者どころか、こんな欲望がある時点でもう俺は駄目だ。誰がそれを許しても、思想だけなら自由だなんて言葉を見ても、自分自身が何より認められない。性的対象が同性の子供だなんて。

もうこうなったら全て忘れよう。恋やら恋人やらは永遠に諦めよう。何もかもに蓋をして、真っ当な人間を目指して生きていこう。





そう決意してから数年。
出来るだけ子供を避けつつ生きてきたというのに。


何故。何故今。
見知らぬ少年が、俺の隣に座っているんだ。


あれか。あれなのか。
天気もいいし、たまには緑に囲まれた場所で昼食を食べようなどと、大それた事を考えてしまったのが悪かったのか。
子供向けの遊具などなくひたすら整えられた緑が広がるだけで、それこそ時折ご年配の方や犬を連れた人が散歩をしているくらいの静かな広場を選んだのに何故なんだ。明らかに子供受けしないだろうなんて考えが甘かったのか。
それでも、子供がいるという事までは想定内の事だ。静かな場所が好きな子だって普通にいるだろう。だが何故この少年は、誰も座っていないベンチもあちこちにあるのにあえて俺の隣に座ったんだ。


やめてくれ。
話をしたそうな目で俺を見ないでくれ。
少年、落ち着いて周囲を見るんだ。この右隣の何かはよく分からない鈍色のオブジェを挟んだ、その向こう側のベンチに人の良さそうな老夫婦が座っているだろう。少年、今からでも遅くない。話し相手ならばそちらのご夫妻に頼んだ方がいい。近年は物騒な話をよく聞くが、少なくとも俺よりはずっと安心できる方々の筈だ。俺は所謂、変態の部類だ。


名も知らない少年。話しかけるタイミングを図らないでくれ。勇気を出してはいけない。その勇気はもっと違う事に使ってくれ。今はそれを胸に閉まっておいて、電車内で立っている妊婦さんやご老人の方などへ話しかけたい時に使おう。もしくは、クラス替え後に隣になった初対面の子でもいい。
隣に座ってきた少年に視線も向けず、黙々とサンドイッチを口に詰め込んでいる様な冷たくて愛想のない男には決して使ってはいけない。

ああ最早これを飲み込んだら今にも話しかけてきそうだ。視線が頬に突き刺さっている。どうしよう。どうしたらいい。もう味も何も分からなくなっている、このツナサンドを飲み込めた瞬間に立ち上がればいいんだろうか。いや、そんなあからさまに逃げたら少年が傷つくかも知れない。
最上の対応は恐らく、話したい内容を聞き、当たり障りない返答を返す事だろう。出来るのか俺に。というか何故見つめてくるのか、本当にこんな男に何が話したいんだ、何の用があるんだ少年。そこの人、社会の窓が開いていますよとかではないよな。そっとズボンを見る。開いていない。違った。
ああどうしよう。逃げ出したい。





「あの」




声をかけられ思わずそちらを向いてしまった瞬間、反射で泣きそうになった俺のような存在はびびりとでも呼ぶのだろうか。呼ぶのかもしれない。呼ぶだろう。誰でもいいから変わってほしい、俺のようなショタコンと呼ばれる人間以外で。








ショタとショタコンの話。






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