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オルサンオル(LAL)


オルサンオル
電波なオディオ よく分からない話




落ちそうだと思った。
まるで崖の端に好んで寄っているかの様な風体で、少し強い風が吹くだとか小石を踏んで上体が傾くだとかそんな些細な刺激でも、そのまま底へ落下していきそうだと思った。

だから私は、彼を落とす事にした。


彼の事が心底嫌いだったからとか生理的に気に入らないからとか、そういうわけではない。私は憎悪からそんな行動が取れるほど、彼の気質を深くまでは知らない。少しだけ見た印象としてはむしろ、微かに好ましいとさえ思っている 。


ただ本当に不安定だったから。危ないなと思ったから。何の心構えもないままにふらりと落ちて、勢い良く地面に叩きつけられる様な悲惨な結末よりも、緩やかに沈めた方が幾分優しい終わりではないかと思ったから。

だから落とした。

つまりこれは純粋なる好意に他ならない。
憎しみに身を浸すのは存外楽なものだから、そんな思いからきた実にささやかで酷く独善的な行い。



なので。泥じみた感情の中へ静かに沈んだ彼が坦々と浮上したあげく、どういうわけだか私に執着したのは予想外であったとしか言いようがない。

彼には悪い事をしたのかもしれない。誰かに固執するのは疲れる事だろう。

ああしかし、私の肩口に埋まる彼の体温というのは、どうにもあたたかくも冷たくもない。枯れ木や落ち葉の様で酷く心地いい。これは何というか、落ち着く。

手放し難いものが出来るなんて、あまり好ましい現象ではないのだけれど。



机の縁にグラスがあった、彼は危ないなと言ってそれを地面に置いた。





魔王になりそうだったサンダウンの背中を、電波な親切心で押したら懐かれた魔王さん






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