小ネタ | ナノ


キドマドキド(LAL)


サンダウン記憶喪失ネタ
とりあえずサンダウンがマッドを覚えてない。





ふと目を開けた時、妙な喪失感があった。ざらざらと何かが崩れた後の様な、落とした物を見過ごした様な心地に、つい首を傾げる。
何故だろう。という疑問の答えは、割合すぐに分かった。




最初に気がついたのは、愛馬の変化だ。
確かな年月が刻まれたその身体に思わず目を向いた。混乱する私に、前と変わらずそっと寄り添ってくれた。性格、行動等は変わっていない、という事実には酷く安堵した。



街中をよくよく探れば、酒場に張られた乱雑な情報の日付は自分の知っている物から飛び、己の賞金額は少々上がっていた。ガラスに映った自分の顔にも髭と皺が心なしか増えている。



記憶が飛んだのか、未来に来たのか。一瞬考えて、現実的な方を主軸にした。記憶が欠落していると考えるのが妥当だろう。


とにかく何だか分からないが、数年の記憶が飛んだ。なくなったものは仕方がない。これからを考えるべきだ。
幸か不幸か、記憶がない事以外は身体的に問題なさそうではある。


手荷物はどうなのだろう。
まずは銃はよく観察する。傷は増えていたが前と変わらない。手入れも怠っていない。これならば大丈夫だろう。嗜好品の好みも変わっていないらしい。酒も葉巻も慣れ親しんだ種類のままだ。
しかし、いくつかの愛用品は代替えしていた。特に、使い込んでいたナイフが無くなっていたのは素直に惜しいと思う。


だが、変わっていたのはそれだけだ。
それに元より放浪の身。逃げ続けた日数が、知らぬ間に数年ほど伸びただけの事。大した喪失ではないだろう。


考えていた通り、消えた数年間がなくとも特に何の問題もなく数日が過ぎた。




黒い賞金稼ぎが来るまでは。



「よーうキッド!!また会ったな!」


第一印象ではないが真っ先に思った事は、こんなに親しげな勢いで挨拶をしてくる賞金稼ぎがいていいのだろうか、彼はこれで大丈夫なのだろうか。という事だった。
また、と彼は言った。ならばそこそこ見知った関係なのか。

とにかく適当に追い返そうとすれば、何故か訝しげな表情で此方を見る。


「…何だよ、キッド。具合でもよくねえのか?」


心配された。妙に気恥ずかしい。
本調子でもない私とやっても意味がない、という旨を遠回しに言い放ち、彼は去っていった。回りくどい言い方だったが、親身になって心配してくれていた事は伝わってきて、どうしたらいいのか分からなかった。



それだけなら良かった。
だが、それだけではなかった。

何故か会う。とにかく会う。
荒野にいても、岩の影にいても、街の端にいても、酒場を覗いても彼に無駄に会う。凄まじいまでの遭遇率だ。
しかも、場所によってはやけにフレンドリーな様子で接してくるのは一体どういう事なんだ。


行動パターンが割れているのだろうか。と考えてみたが、それにしては、私に気づいていないパターンも多々あるのが不可思議だ。




枯れた植物が蔓延る建物に入ろうとする彼を見かけた時も、彼は此方に気づいてはいなかった。すぐにその場を離れた方がいいとは思ったが、ついつい気になって観察してしまう。


彼は最初、植物を手で無理矢理払っていた。
中に入りたいらしい事は分かる。が、思いの外固かったのか段々面倒になってきたのか、軽く舌打ちをしてナイフを取り出した。

それを見た瞬間、思わず目を見開く。
あれは、なくなっていた私のナイフだ。





数年の間に何があった






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