小ネタ | ナノ


オルステッド+オディオ(LAL)


オルステッドとオディオ
not双子 暗い



何もない空間の、何もない空中に、ふわりと浮かぶ。どうして浮いているのかは分からない。いつから浮いているのかも覚えていない。
どちらが上でどちらが下か分かりにくいなあ、とぼんやり思う。どこまでも意識が遠い。

する事もやりたい事も特にないのでしばらくふわふわと漂っていたら、金色の何かが視界の端を掠めた。そうっと視線をそちらへ泳がせてみる。何だか酷く寂しいこの場所に、金色の髪の赤い目をした人がいた。
という事は地面は此方だ。彼の近くに行けば、足元に土の感触が返ってきた。曖昧だった感覚が少しだけ冴える。よく見れば彼は私にそっくりだった。

彼はどこか遠いところを見ていた。視線を辿れば、今度は何かが見えた。街だと思う。

真正面に立ってしばらく観察しても反応がない。私の事は見えていないらしい。


呪詛めいた言葉を吐く彼の目を見つめる。彼から吐き出された言葉が耳に入り意味を理解する度、自分の輪郭が歪む気がした。

聞く人は私以外に誰もいない。
見えない私に届いても彼の心情は変わらないだろう。

乾いた風が吹いた。彼の金色の髪を揺らす。
ようやく普通らしい現象の末端が見えたのに、彼は気にも止めない。

私はそっと声をかける。

「ねえ」
「君は、ここで何をしているのかな?」
「一人でこの場所にいるのは寂しいと思うんだ」
「何か話をしないかい?」

届かない言葉を繰り返す。声さえ届けば何かが変わるかも知れない。でも届かない。
彼の視線はあの街から動かない。


あの街には誰もいない。きっと彼がすべてを消してしまった。私は何となくそれを知っている。

彼には私の声も届かない。きっと彼は私を置いていった。もしくは私が彼から離れた。私は何となくそれを知っていた。





オルステッド≒勇者としての何か






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