小ネタ | ナノ


マドキド(LAL)


何かにある、黒服の青年の夢を見た と既視感を抱く程度にネタが被っている物







黒い犬の夢を見た


ふと気が付けば、私は暗い場所にいた。
暗い。何も見えない。地面すら視認が危うい場所でぼんやりと私は佇んでいた。
ここには、私以外の何かは無いのかも知れない。ああ、悪夢もついに話題が切れたのか。夢すらこんな簡素なものになるとは。



どれほどの時間を惰性に潰しただろうか。
ふと前を見れば、暗いだけの場所に何かが見えた。


黒い生き物。
…犬、だろうか。

黒い毛並みに、黒い瞳。全身の色彩が黒い。
それでもこの暗い場所で背景に溶け込まない強い色の犬。丸い愛嬌のある瞳を此方へ向けている。その黒い目玉は真っ直ぐで、どこか楽しげだ。はたりはたりと大きめの尻尾を揺らす。



目を逸らした瞬間に、私はこの犬に喰われるのだろう。と、何の確証もなくそう思った。目玉から、緩く狂気を感じる所為だろうか。




長い長い時を、犬と見つめ合っていたと思う。黒い犬は諦めない。
そんなに喰いたいと言うのだろうか。
なら、喰えばいい。どうせこれは夢だ。私は目を瞑る。


けれど一向に痛みが襲ってこない。
まさか、あの黒犬は飽きてしまったのではないか。もしくは私の勘違いか。何故だか慌てて目を開けた。しかし、そこにいたのは黒い犬などではなく、黒い服に身を包む賞金稼ぎの姿だった。


唐突に表れた彼は、固まる私の左手を楽しそうに掴み上げる。その様子は、まるで待てを解かれた犬の様だなと頭の隅の方で思った。黒い犬のままだったなら、千切れんばかりに尾を振っていたのだろうか。


ゆっくりと大きく開けた口内からは犬歯が覗く。その歯は緩やかに手に食い込んでいき、つぷりと皮膚を裂いた。開いた傷口から流れ出る赤い液体を、酷く丁寧に舐め取る。彼はやはり楽しそうだ。


「キッド」


彼は上機嫌な声で私の名を呼び、更に言葉を続けようと口を開け――…。





そこで目が覚めた。
死にたくなった。







夢は無意識の表れという説が。







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