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「名前、帰ろ」
当たり前のように蓮から発せられる言葉に、違和感を持つものなんて誰もいなくて、いつものように雑談をしながら帰って行く名前と蓮。
「…あいつら、いつくっつくんだろうな」
「あんれーまさみっちゃん。名前狙ってたんじゃなかったの?」
「んなのとっくに諦めたっつーの。あいつら見てりゃー自信も無くなるわ」
「確かにー!」
蓮と名前は、1年、2年、3年とずっと一緒のクラスで、何も知らない人から見れば熟年カップルの様に見えるのだが、実際は付き合ってすらいない。
2年に上がって、正光は名前に一目惚れした。
しかし、毎日のように蓮の隣を歩く名前を目にしていれば、自信もなくなるわけだ。
「そろそろくっついてもいいんじゃねえの?高3なんだし」
「ま、そりゃー本人たち次第だからねー♪」
「名前、今からなんかある?」
『何もないけどー?』
「じゃあCD買い行くの付いて来てよ!」
『いーよー!』
「じゃあ行くかー」
くるりと方向転換してCDショップに向かう。
『何のCD買うのー?』
「うーんとねー…」
たわいもない会話をしながら歩く。
日常になったその行動を特別なんて思ってなかった。
隣に居ることが当然で、互いの気持ちに気付くこともなかった。
ただ、隣にいるという心地よさを噛みしめていた。
(隣同士がいちばん自然)
(隣にいられる幸せを噛みしめて)
END
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