今日は何してやろうか、とイタズラ内容を考えながらぶらぶらと学園内を歩いていると、うんうんとうなっている雷蔵を発見した。
また悪いクセがでてるなぁ、とクスクス笑いながら雷蔵の肩を叩く。
「らーいぞっ。どーしたんだ?」
「あっ、三郎」
振り向いた雷蔵の手には縦に細長い紙と筆が握られていた。
「なんだ、この紙?」
雷蔵が持っている紙を指差すと、雷蔵はきょとんとした顔で三郎を見つめた。
「あれ、三郎知らないの?今日は七夕だよ」
そう言って、雷蔵は自分の背後にある長い長い竹を指差す。
三郎はぽん、と手を叩いてそうかそうかと頷いた。
「七夕などすっかり忘れていたよ。ということは、その紙は短冊で雷蔵は何を書くか悩んでたって訳か」
「よくわかるね」
「そりゃ雷蔵のことだから」
にやり、といたずらな笑みを浮かべると、雷蔵もくすりと笑みを浮かべる。
自分の変装を五年も続けている三郎に、自分の顔を五年も貸してあげている雷蔵。
二人の間に隠し立てなど無意味だということは二人ともよく知っていた。
「そんなに悩むなら私が書いてあげよう」
三郎は目にもとまらぬ速さで雷蔵の手から短冊と筆を奪いさる。
「あ、もう!止めてよ!」
短冊を奪い返そうとする雷蔵をひらりひらりと交わしながら、三郎は器用に短冊に文字を書いていく。
ものの数秒で願いごとは書かれてしまい、三郎は得意そうに雷蔵に願いごとが書かれた短冊を突き付けた。
「これでどうだ?」
突き付けられた短冊を見た雷蔵の顔が途端に赤くなり、ぴしりと固まってしまった。
三郎が「おーい」と呼び掛けても「あ、う」と言葉にならない声を放つだけだった。
これはもしや、と三郎は思ったことを口にした。
「なあ雷蔵、もしかして・・・当たってた?」
ぴくり、と雷蔵の肩が跳ね上がる。やはり当たりのようだ。
『三郎と一緒にいられますように』冗談半分、残り半分期待を込めて書いた願い。
まさか当たっていようとは。
あまりの嬉しさに自然に口元が緩んでしまった。
「わわ、悪いかよ・・・!」
笑われた、と思った雷蔵が赤く染まった顔で三郎をきっと睨む。
そんな顔で睨んでも可愛いだけだというのがわかってないのだろうか。
「全然悪くない。むしろ嬉しい。雷蔵、可愛い。大好き」
ぎゅっと抱きついてやると、雷蔵の顔はますます赤くなり、恥ずかしいのかじたばたと腕の中で暴れ続ける。
「いつまでも・・・一緒にいような」
留め、とばかりに雷蔵の頬に唇を落とす。
さっきまでジタバタ暴れていた雷蔵の動きがぴたりと止まる。
「三郎・・・反則だよぉ・・・」
ぎゅっと三郎の服を掴み、うるんだ瞳でそう訴えてくる。
その姿がとても可愛すぎて、どうにかしてしまいたいという欲を必死に押さえ込んで、三郎は雷蔵の顎を持ち上げた。
「雷蔵、それも反則」
ぐっと近づく三郎の顔を、雷蔵は拒まずに受け入れた。



「よっし!この短冊一番上に吊るそう」
「えええええ?!」
「上のほうに吊るしとかないと、願いが天まで届かないだろ?」
「・・・うん!」

2009.07.20


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