「あの、土方さん。原田さんは悪くないんです」
「お前は黙ってろ、ななし。違うんだ、土方さん。悪ぃのは俺の方なんだ」
かばい愛
折角の非番だというのに、俺とななしは土方さんの部屋で正座させられていた。
いつも書物や何やらでいっぱいのこの部屋は、今日はきれいに整頓されていて広く感じた。
…しっかし寒ぃな。と俺は軽く身震いする。
俺でもこんなに寒いとなると隣にいるこいつはもっと寒いに違いない。
ちらり、ななしを見る。
寒そうな素振りは見せないものの、手と鼻の頭が赤くなっていた。
「土方さんよ。そういうことだから、もうこいつは部屋に帰していいよな」
土方さんに、意味ありげな視線を送る。
最初は訝しげにしていたが、俺の言っている意味がわかったのだろう、腕を組んで顎を使って、お前は部屋に戻れ、とななしに命じた。
「で、でも!」
いつもは大人しいななしが反論する。
本当、真面目っつーか、何つーか。
俺と土方さんとで逃げ道をつくってやったのだから、さっさとずらかればいいものを。
俺は、心の中でため息をついた。
「まだ何かあんのか」
「わたしがもっと注意していればこんなことにはならなかったはずですし…」
おいおい、それは違うだろうよ。あれは誰だって避けられないだろ。
俺は息を吐きながら、口を挟む。
朝からずっと、このやり取りだ。
流石に土方さんも疲れてきたのだろう。
ガリガリと頭を掻いて俺らを見た。
「今日はもう終いだ。詳しいことは平助にでも聞いておく。ったく、ふたりしてかばいあってんじゃねぇよ。この糞寒ぃのに暑苦しいったらねぇぜ」
ふたりして顔を見合わせる。
意外に早く解放されたな。ってか。
「ありがとよ。次は火鉢があると嬉しいぜ」
「…あいよ」
障子を閉めると、はぁ、とななしのため息が聞こえた。
土方さんの説教って肩凝るよな。
「それにしても俺ら、そんなに熱々だったのか」
冗談めかして言うと、
「そんなつもりは…」
と顔を赤らめて髪を押さえていた。
その仕草が可愛く見えて、つい、ななしを壁ぎわに押しやった。
「え、ちょ、さのさ…!」
「かばい、愛なんつって」
そのままがばっと抱きついて赤い鼻にキスしてやる。
たまには、ななしにぶつかって、洗ってる米をすべて流して、土方さんに叱られるのもいい。
fin.
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