わたしは、心配なんです。
それは──、
死んでもあいして
「左之さん、」
寝る支度を終えると、わたしは愛しいひとの名を呼んだ。
しかしそれは、甘く優美なものではなければ、暗く切ないものでもなかった。
怒りに似た何かが、わたしを動かしていた。
「ななし?どーした?んな恐い顔しちまって。可愛い顔が台無し…」
「いいから、ここに座ってください」
目の前を指差して左之さんが腰を下ろすのをじっと待つ。
「?」
不思議がりながらも、彼はわたしの前に胡座をかいた。
ふわ、と彼の香りがして決心が鈍りそうになるが、それを断ち切るように息を吐く。
「何故、ですか?」
わたしの問いに、彼は目を丸くする。
いくらカンのよい彼でも、今回ばかりはわたしの言いたいことを予知できないだろう。
「何故ってのぁ…?」
彼の表情を見ながら、わたしは続ける。
「何故、左之さんは──」
我ながら変なことを言うと思う。
それでも、言わずにはいられなかった。
「そんなに、格好いいんですか!!?」
部屋に長いこと間。
沈黙は左之さんの笑いによってかき消された。
「なんじゃそりゃあ!?」
「ちょっ、笑わないでください!わたしは、真剣なんですから!」
笑うな笑うなと言っても、暫く左之さんが笑いを止めることはなかった。
ひーひーと唸ってから、ようやく、
「悪ぃ。けどよ、いきなり、それは…、反則だろ」
笑いがおさまった。
そして、急に真面目な顔になる。
「いきなりどうしたんだよ?誰かに何か、言われたのか」
ほぼ図星をつかれ、まつげを伏せる。
彼は黙って次の言葉を待ってくれた。
「別に直接言われたわけじゃありません。ただ…」
「ただ?」
「どこに行っても、左之さんは女のひとにもてるじゃないですか。わたしなんかより、数倍綺麗なひととか…、」
ゴニョゴニョと言ってみるが言えば言うほど嫌な女になっていくようだった。
あぁもう、泣きそう。
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