ふぁあぁぁ…。
「でけー口、」
誰も見ていないと思ったのにわたしの大あくびを見ていたのは、新選組十番組組長・原田左之助さんでありましたとさ…。
ひなたぼこひより
「なっ、原田さん!勝手にひとのあくびを見ないでください!」
「しょーがねーだろ。障子、開けっぱなしなのが悪ぃと思うぜ」
春の日差しもなかなかだけれど、秋も十二分に眠気を誘う季節。
障子を全開に、日向ぼっこをしていると、急に庭の方からひとがやってきて、わたしのあくびを見て、くつくつと笑った。
そのひとはそのまま、ぺたんと、さほどきれいでもない廊下に腰を下ろす。
「そんな所じゃ汚れちゃいますよ」
一応、声をかけてみる。
巡察帰りか、隊服を来ていらっしゃるから。
「いや、ここでいい。今日、すっげぇいい天気だよな。昼寝にゃ、もってこいだ」
ごろりん、という音が出そうに、原田さんがその場に寝転ぶ。
あーあ。
わたしは、机に肘をつき直した。
「お前こそこっち来れば。もっとあったかいぜ」
「原田さんがちょっかい出してくるから嫌です」
「あ、バレたか」
鳥が元気よく鳴く声がする。
どこかで、隊士たちの笑い声も聞こえる。
でもあとは、静寂だけがカラダを包んでいった。
ふたりして、黙ってみる。
「……」
「……」
わたしはしずしず立ち上がり原田さんの隣に立った。
原田さんも体を起こした。
「座れば」
「汚れたくありません」
「なら、
俺の膝に座れ」
原田さんが言う方が早かったか、わたしが引っ張られる方が早かったか、どちらにしろ立ってはいられなかった。
ものすごい力で引っ張られ、体勢を崩す間もなく、ちょこんと、原田さんの膝の上に座る。
「え、え、あの…!」
「ななしって、いい匂いがするんだな」
「は…?」
座るやいなや、髪に顔を埋められる。
加えて、心臓が鳴り止みそうにない。
「離してください、よ…」
いい匂いがするのは、むしろ原田さんの方だと思う。
日だまりみたいな心地いい匂い。
「俺、すきだ」
「な、何がです、か…」
「日向ぼっこ」
息の仕方を忘れた。
「ジョーダン。
ななしのこと」
…わたしもすきです。
目を閉じながら呟く。
日向ぼっこが。
貴方とふたりきりの、日向ぼっこが。
fin.
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