最初に叫んだのは、永倉さんを押さえていた平助くんだった。


「ナニやってんだよ左之さん!!?あんたまで酔っぱらって…えええ!?」

「いやぁ。こうやりゃ酔いも醒めると思ったんだが…」


ダメか。
原田さんが呟くや否や永倉さんが平助くんを蹴り飛ばす。

そして、ものすごい形相で原田さんを睨み付け…。


「何しやがる左之てんめえっ……「うっせぇぞてめぇら!何やってやがる!!」


この事件は、

永倉さんが再び暴れだす前に(少なからず予想は出来ていたことだが)鬼の形相の副長の登場により、呆気なく幕を閉じたのだった。





「ななし」


土方さんの軽い説教が終り部屋を出ると、原田さんが声をかけてきた。

ちなみに永倉さんは、すっかり酔いが醒めたようで、しおらしくなり、まだ中で叱られている。


「これから自分の部屋で飲みなおそうと思うんだが、一緒に来てくれねぇか。茶の詫びと言っちゃ何だけどな」


原田さんの瞳が優しく、暗闇で黒蜜色に光る。

まだ起きているつもりでいたので、少しなら、と原田さんのあとをついていった。





「…こっちは、どんな味がする?」

「ほんのり甘くて、美味しい水みたいな味がします。すごく、飲みやすいです」


部屋に通されると、先程までいた部屋とは違い、いい香りが漂っていた。

それが原田さんの匂いだとわかったのは、原田さんがわたしの隣に座って、御猪口に真っ白なお酒を注いでくれた時だった。


「そうか。ならこれはどうだ?」


次から次へと、少しずつとはいえ、朱色の御猪口が液体で満たされていく。

その感覚にめまいを覚えながらも、まだ大丈夫だろう、とそのまま飲み進めた。


「よく、酒の味をわかってんな。新八や平助は量ばっかりで、ろくに酒を味わおうとしねぇんだよ」


くい、と原田さんも自身の杯を煽る。

唇から杯を離す瞬間が何とも妖艶で、つい、見とれてしまっていた。


「…なんだ?そんなに見つめられたら、照れるだろうが」


まったく照れた様子のない原田さんは、いつも飲むお酒より高価らしいお酒をわたしに与える。


「…その、原田さんは…。いくら飲んでも酔われないんだなと、思って…」


数回瞬きすると、くらり、視界が揺れた。


「おっと」


原田さんはそんなわたしの肩を支えると、少し飲ませすぎたか?と首をひねった。







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