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キスをする。
今まで以上に、心無いキスを。
その唇が肌に触れて、無造作にはねた黒髪が頬を撫でる。

「なんなんですか、社長」

抵抗しようとすると、手首を抑えつけられた。
強く。
その手の大きさをすでに知っていたはずなのに、こんなに強い力があるなんて思いもしなかった。
私はゆるゆると力を抜いて、息を吐く。

「社長、次に会う時は法廷ですよ。離してください」

努めて冷静に言ってみる。
しかし、社長は淡々と行為を進めていく。
今日一日おかしいと思っていたが、本格的に変だ。
服に手が掛かって、さすがにまずいと私は社長の手を掴んだ。

「億単位の慰謝料、払いたいんですか」

「その前に、あんたに弁護士を雇う金があんの」

さらりと反論した社長の表情には何の色もないまま。
私は睨むのをやめて、思わず顔を顰めた。

「どうしたんですか。変ですよ。何かあったんですか」

社長はしばらくぼうっと私の顔を見た。
何も言わずに見つめると、息を吐き、のろりと体を起こした。
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