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マンションに着くまで、社長はぐちぐち文句を言っているだけだった。
マスターは何も言わなかったらしい。
安心したような、がっかりしたような。
私もいつも通り、ハイハイと彼の説教を聞いていた。
「社長、夕飯は」
テーブルの上に散らかったお菓子とジュースを見て、私は眉を顰める。
「食ってない」
「お菓子で済ませようとしないでくださいよ」
「面倒だったんだよ。あんた作れ」
うっとうしそうに社長が冷蔵庫からビールを取り出す。
作ってやらないとごはんも食べられないのか。
私は溜息をつき、荷物を置いてキッチンに立つ。
ごはんがないので、パスタを茹で始める。
ホワイトソースを作り、冷蔵庫にあった野菜と合わせることにする。
リビングからはパソコンの音。
社長の好きな古いジャズ。
ここ最近の日常風景。
どうしようもなく安心して、どうしようもなく戸惑ってしまう。
もし私が両親と会うことになったら、こんな暮らしもなくなってしまうんだろうか。
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