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会計をしようと立ち上がると、マスターが戻ってきた。
ごちそうさまですと頭を下げると、飲み物とアイスはサービスしてあげる、とにっこり笑ってくれる。
私が断るはずもない。
遠慮なく礼を言って、食事代だけ払った。

「リョウちゃん、ご両親のことだけど」

ドアに手を掛けたとき、マスターが追いかけてきて私を呼び止めた。

「俺がどうこう言える問題じゃないけど、もしリョウちゃんが悩んでるんだったら会ってもいいんじゃないかな。後悔するにしても、会わないより会ったほうがいいと思う」

いつになく真剣な顔で言われて、私はこくりと頷く。
それを見て、彼は大人の顔で微笑んだ。
諭されている自分は子供だなと思う。
だからといって、すぐに会う気にはなれないけれど。

「こんな時間に呼び出すとか喧嘩売ってんのか」

俯いていると、ふいに後ろから聞き慣れた声がした。
驚いて振り返ると、不機嫌な顔をした社長がこちらへ歩いてくる。

「夜中に女の子ひとりで帰せないからさ」

私がマスターの顔を見ると、彼は何食わぬ顔でにっこり笑った。

「さっさと帰るぞ」

「ほら、リョウちゃん、置いてかれるよ」

「え、えっと、ごちそうさまでした」

マスターに促されて、さっさと車のほうへ戻っていく社長の後を追いかける。
社長に会いたくないからここに来たのに、と思ったがもう後の祭り。
いや、マスターのことだから、私が帰りづらいと思っているのを見越していたのかもしれない。

感謝するべきか否か。
いや、するべきだ、と私は心の中でマスターにお礼を言った。
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