7
三十路に突入したばかりの担任は、気さくで、友達感覚でしゃべれる物分かりの良い人だ。
短い髪に、茶色のフレームの眼鏡。
童顔を隠したいのか少し顎髭を生やしているが、これがまた似合わない。
「小谷、俺は別に独り言をしゃべってるわけじゃないんだけど」
ぼうっと髭を見ていると顔を覗き込まれて、私は思わず身を引く。
「聞いてます」
「じゃあ返事してよ。せんせいさびしい」
「きもちわるい」
「おまえはそういうことだけははっきり言うよな」
吉田が大げさに肩を落とすので、私はにこりとひとつ笑みを作ってみせた。
「……で、仕事は忙しいのか」
頬杖をつき、吉田が本題に取りかかる。
「まぁ、ぼちぼち」
「学校も来れないくらいか」
「来てますよ、一応」
「単位ぎりぎりでな。おまえ、本当危ないんだって」
← | →