「会いたくないの?」

「どうでしょう」

「わかんないの?」

本日二度目の質問。
私はアイスを睨みつけて、なんとか正しい言葉を選びだそうとする。

「会いたいとは、思ってるかもしれないです。けど、必要がないっていうか……」

「必要?」

「会ってもどうしたらいいかわからない」

マスターは目を細めてじっと私を見、何も言わずに接客に席を離れた。
私はアイスが溶けていくのに気づいて、眉間の皺を緩める。

両親に対する様々な感情が緩和されて、それを伝える必要がなくなった。
私は今の生活にそれなりに満足していて、そこに彼らの入る余地はない。

私は冷たい。
彼らが子供を捨てられる人間であるのと同様に、私も親を捨てられる。
それを実体験として確信し、愕然としてしまった。

社長が言っていたことが、今となって身に染みる。
必要がなくなって、依存していたことに気づいて、本当に独りになって足場が危うくなる。
そして、誰かに縋りたくなるのだ。

社長に会いたい。
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テーマ「人外ファンタジー」
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