食事を終え、薬を飲んで寝てしまった社長を揺すって声を掛ける。

「社長、病院……」

「行かない」

「あなた金持ちなんだから、医療費に困るわけじゃないでしょ」

「そういう問題じゃない。嫌いなんだよ」

子供かあんたは。

いくら勧めても動こうとしないので、仕方なくベッドに移動させる。
それから片づけをして、部屋の掃除までして、おなかがすいたのでバナナを食べた。

一人暮らしで3LDK。
社長が帰りたがらないわけが、少しわかる気がする。
いくつになってもひとりは寂しい。
置き去りにされる孤独というのは、恐怖と不安を伴って心を害するものだ。

病気のときは特にそう。
両親と暮らしていた頃は、いつも一人で耐えていた。
祖父母と暮らすようになってからも、迷惑はかけられないと体調が悪くても言えなかった。
耐えるだけだ。
追い詰められて、潰れないように。
社長もそうしてきたのだろうか。
広い家でひとり、誰にも助けを求められずに。

立ち上がって、寝室へ向かう。
起こさないようにこそっと中に入り、電気をつけずに枕元に膝をつく。
薬を飲んだからか、少し落ち着いているようだ。
そっと額に触れる。熱い。
ゆっくりと社長の目蓋が持ち上がった。
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