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病人にはおかゆが定番。
が、おかゆも雑炊もリゾットも嫌いな社長にはオムライスを作ってやることにする。
どんなときでも、これさえ出しとけば間違いない。
楽な男だ。
「社長、起きて。熱は?」
「三十八度。殺す気か」
「病院行ってないでしょう。食べて終わったら……」
「医者が信用できるか。さっさと水入れてこい」
市販の薬より信用できるだろ。病人のくせに。
案の定、社長はオムライスを見て食べ始めた。
でも半分だけ。
もったいないから残りを食べると、社長が呆れたように溜息をついた。
貧乏人は風邪なんかひかない。
社長は薬を飲んで横になり、ふと思い出したように口を開いた。
「朝、仕事片づけてきたから、明日はメールのチェックだけしといて」
私は目を見開く。
「え、事務所行ってきたんですか」
「あと、前会ったとこからまたアポがあるかもしれないから、了承だけして日程は後で連絡するよう伝えといて」
「はい。イトウさんでしたっけ」
「それと、頼んでた資料がくると思うから、確認して礼の電話。たぶんFAX」
はい、と答えて手帳にメモする。
社長は仕事に生真面目だ。
趣味みたいなネット起業でも、それが成功していても、責任感が見える。
お金がどうのこうのというだけじゃなく、だ。
少し、尊敬する。
素直に手助けがしたいと思う。
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