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風邪ひいた。
薬買ってこい。
と社長から電話があったのは、お昼休みのこと。
午後から単位の危険な授業があったので、放課後行きますと答えると、社長と授業とどっちが大事なんだと脅された。
鼻声で言われても怖くない。
単位です、と答えて電話を切った。
放課後、普段以上にさっさと学校を出る。
薬局に寄って薬を買い、スーパーに寄って食べ物を買い込む。
ところで、社長の家に行くのは初めてだ。
電話をすると、いつまで待たせてるんだと怒られた。
今行きますと家の場所を尋ね、着いたのが高級マンションで引き返したくなった。
なんでこんなところに住んでいて、あんな事務所で寝泊まりしてるんだ。
貧乏人への嫌がらせか。
オートロックの玄関を抜け、5階まで上がる。
勝手に入れと言われていたので、遠慮なくドアを開ける。
部屋が暗い。
そろそろと上がって家の中を伺うと、ぐるぐると毛布に巻かれて、リビングのソファーで社長が寝ていた。
大画面のテレビでは、音楽チャンネルがつけっぱなしになっている。
「なんでこんなとこで寝てんですか」
「おせぇよ、さっさと薬よこせ」
「何か食べてからにしてください。プリンとバナナ買ってきましたけど」
「あんたが作れ」
死んだ目をこちらに向けられて、私は体温計を渡してキッチンへ行く。
このお坊ちゃまめ。
一人暮らしの分際でダイニングキッチンなんかいらないだろ。
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