「で、何について書いたんだよ」

私は社長を睨み、自分のコーヒーと茶菓子を出してきて彼の向かいに座る。

「夢のマイホームについて」

「マイホーム?」

「幼い頃から引っ越しばかりで、両親とも一緒に暮らせなくなって、そんな私は一生懸命働いて、いつか自分の家に住みたいです」

「お涙頂戴、ってか。今からでも読みに行けよ」

心底馬鹿にしたように、社長は鼻で笑う。
私は黙ってカップに口をつけた。
仲良くもないクラスメイトたちに同情されるより、こうして社長にけなされるほうがずっとましだ。

「そういえば、あんたの親は何してんの」

ふと気がついたように、世間話でもする口調で社長が尋ねてきた。
出会って約半年たつというのに、今更だ。

「私を捨てて夜逃げしたっきりです」

あまり答えたくない質問だが、社長に隠す必要もないし素直に返事をした。

「最低な親だな」

「全くです」

「うちの親も子育てなんてしないけど、金だけは落としてくれる分ましだな」

吐き捨てるような口調に、私も今更社長は親が嫌いなのかと気がついた。
別に育てるのは親じゃなくてもいいのだ。
金さえあれば、どうあっても生きてける。
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