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じっと見ていると、社長はうっとうしそうにこちらを一瞥した。
「社長、私とお友達になりませんか」
「断る」
「即答ですか」
「俺は友達の必要性を感じない」
やっぱり。
ふっと笑みを漏らすと、社長は気に入らなさそうに腕を組んで椅子の背に凭れる。
「俺たちに友達を作るのは無理だ。なんでだと思う?他人を信用してないからだよ。遊ぶ相手が必要か?相談相手が必要か?他人と一緒にいるのが苦になるってのに、何をもって友達が必要だって言うんだ」
全くもって社長らしい。
それを聞いて、私は再び笑みを落とす。
社長が眉間の皺を深くする。
「俺たちにって、仲間意識じゃないんですか。友達みたいですよ」
「……友達じゃない。同類だ」
「貧乏人と同類ですか」
私がにやにやしながら社長を見ると、彼は舌打ちをして書類に戻った。
同類か。
そう思われているだけで、上出来だ。
社長の言葉が思いがけずうれしくて、私もそれ以上何も言わずに仕事へ戻った。
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