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「そういえば社長、私の名前知ってたんですね」

学校から帰り、言いつけられた雑用をしながらふと思い出して社長に話しかける。

「バーに行ったとき、呼んだじゃないですか。知ってたんだと思って」

「いつの話だよ」

デスクに向かっていた社長が、うっとうしそうに眉間に皺を寄せた。

「私も社長の名前知ってますよ。真希」

「呼び捨てすんな」

「いいじゃないですか、友達みたいで」

「俺は雇い主だ。呼び捨てできる相手がいないからって、勝手に友達にすんな」

自分もいないくせに、とぼそっと呟くと、社長が横目で睨んでくる。

そういえば私は、誰かを呼び捨てしたこともされたこともない。
ふと気がついて、本当に友達がいなかったんだなと感慨深くなる。

社長は本当に友達がいないのだろうか。
マスターの話によればいないんだろうし、実際友人がいる気配はない。

まぁこの人の場合、いないというかいらないという感じだ。
それが心地いいのか、逆に私は傍にいられるのだが。
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