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吉田が身を乗り出して、真面目な顔でまっすぐに私を見る。
友達。
縁のない単語に、少しだけ心が動く。

「普段はどうでもいい話をして、辛いときには相談して、助け合って。教師なんかより、友達のほうがずっと小谷の力になってくれる。そういう相手がいることは、素敵なことだと思うんだ」

吉田の言葉に、少し引っかかりを感じる。
友達が欲しいと思ったことがないわけじゃない。
幼い頃は、一人が辛くて仕方なかった。
だけど、今は。
今、本当に私を助けてくれる友達なんてものが存在するのか?

「大人になるとそういう相手を作るのは難しかったりするから、小谷も高校時代に出会えるといいな。先生も応援するから」

そういった教師の善意は、ときに生徒を惨めにする。
私は慣れているからいいけれど、吉田はもうちょっと相手を選んだ方が良い。

「わかりました。ありがとうございます」

それでも、お礼を言って立ち上がった。
私の反応が予想外だったのか、吉田はうれしそうに笑う。

吉田も例の同僚も悪くない。
好意を素直に受け取れない私が悪い。

私は軽く頭を下げて、教室を出た。
早く帰りたい。
結局今日も吉田の話は実を結ばないまま、私はさっさと事務所へと向かった。
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