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帰るぞ、と社長が手を差し出す。
私は少し躊躇って、社長の手を取る。
「あぁ、しゃべりすぎだな」
「飲み過ぎですよ」
「酔ってるな、俺」
「こんな表情豊かな社長は初めてです」
社長は嫌そうに顔を歪める。
私はこっそり笑う。
手が熱い。
酔ってなかったら、手なんか繋いだりするわけない。
「通らねぇな」
「なんですか?」
「タクシーだよ」
「なに贅沢言ってんですか!歩いて帰りますよ!」
やっぱり社長は社長だ。
私は大きな溜息をついて、前へ立ってぐいぐいと社長の手を引いていく。
面倒臭そうにしながらも、社長は黙ってついてきた。
事務所まで約一時間。
手は、繋いだままで。
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