「小谷さん、今はちゃんと学校に行ってるの?」

「はい」

「またこんなバイトしてないよね?まだ高校生なんだから」

冗談めかして、彼女が言う。
きっかけはこれだ。
私が高校生であることが彼女にバレて、他の店員の中でもまずいんじゃないかという空気が流れ始めて、マスターに迷惑をかけるのが嫌で辞めた。

彼女が悪いわけじゃない。
元はと言えば、私に原因がある。

「こいつはうちで事務をさせてるんで、ご心配なく」

ふいに、ぐだぐだと私に凭れていた社長が口を開いた。

「ちゃんと高校も行かせてるし、あと半年もすれば卒業する。わざわざ嫌み言うために話しかけないでくれる?辞めさせるほど気に入らなかったなら、関わらなければいい」

酔っていたのは嘘だったのかと疑うほど、社長はきちんと立ってはっきりした口調で言った。
その物言いのきつさに、彼女は少したじろぐ。

普段より不機嫌な態度は、やはり酔っているからだろう。
そう思いつつ、私はぽかんと社長を見上げた。

「さっさと帰るぞ、凌」

ひとりドアのほうまで歩いていった社長が、振り返ってこちらを睨みつける。
取り残された私は、社長の出て行ったドアを見、同じようにそれを見ている同僚を見、カウンターで接客をしているマスターを見た。

私と目が合ったマスターは、面白そうな顔をして笑う。
そうしてひらひらと手を振ったので、私ははっと我に返って社長の後を追った。
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