7
社長を起こして出口まで引っ張っていくと、扉の前で例の同僚につかまった。
「久しぶり。元気そうだね?」
「……どうも、そちらこそ」
「そうでもないよ。見ての通り、お店忙しくて。小谷さん辞めてからまだ人が入ってないから」
こういう皮肉がストレスだった。
私はすいません、と小さく答える。
「まさか小谷さん遊びに来てくれるなんて思わなかったな。しかも男連れで」
「そうですか」
「まぁ小谷さん、彼氏なんかぽんぽん作れそうだもんね。うらやましー」
うっとうしい。
私は何も言わずに睫毛を伏せる。
私より三つ四つ上の、綺麗な人だ。
面倒見が良くて、最初の頃は新人の私にやたらかまってくれた。
だが、私が誰とも関ろうともせず、彼女に対してもおざなりに接していたらこうなった。
私が悪いのかもしれない。
だけど、ずけずけと内側に入ってこようとする彼女の態度が許せなかったのだ、どうしても。
そして、彼女も私の態度が許せなかった。
私は人との接し方がわからない。
ビジネスライクに付き合えればいい。
それ以上なんて、いらない。
必要ない。
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